秘伝のレシピでも著作権がない?レシピ・食品にまつわる知的財産権

料理レシピに著作権はあるか

日本における著作権は、著作物、すなわち「思想又は感情を創作的に表現したもの」を保護対象としていますが、料理レシピはあくまで「アイディア」であり「表現したもの」ではないとされています。その理由としては、そのアイデアに基づく材料や調理の工程の記載は誰が書いても類似の内容となり「創作的な」表現には当たらないと考えられているためです。

ただし、レシピ自体に著作権がないから、流用しても良いかというと決してそうではありません。

文字情報として表現したに過ぎない材料や調理工程自体には著作権は生じないとされていますが、調理の様子を撮影した映像や料理の写真、レシピ本など個性が表現され具現化したものには著作権が生じます。

そのため、料理教室など営利目的の場でホームページからレシピをコピーして生徒に配布するといった行為は、たとえ、出典を明記していたとしても、著作権の侵害となる可能性があります。

インターネットで情報発信が簡単にできる現代においては、SNS上でレシピの類似性について利用者から指摘され、いわゆる「炎上」状態になることもありますが、一字一句同じレシピの転載であったりよほど悪質な行為でない限り、違法性を証明することは難しいでしょう。しかし、センシティブな問題が明らかになった場合は、企業イメージが損なわれることで顧客が離れていってしまい、マイナスな結果に繋がることが想像できます。商品の宣伝にレシピを活用した広報活動を行う場合などは、くれぐれもご注意ください。

著作権侵害の可能性が低い行為
  • レシピに基づいて料理を作る・その料理の写真をSNSにあげる
  • 既存のレシピを改良して、新しいレシピを作る・そのレシピをネットで共有する
著作権侵害の可能性がある行為
  • レシピのウェブページ(写真入り)をプリントアウトして配る
  • レシピ本を複製する

レシピの著作権に関する2つの裁判例

おにぎりの料理法が著作物に当たらないとされた裁判例(東地判H23年 4月27日)

原告は、考案「模様入りおにぎり具」について実用新案登録出願をし、さらにこの出願について手続き補正書を提出しましたが、この出願は審査請求をしなかったのでみなし取下げになりました。原告は、「ふりかけフレーム ポポロ」という名称の商品を販売する被告に対し、手続き補正書は「ごはん」、「おにぎり」、「ふりかけ」、「具」、「型当て板」の各素材を編集した編集著作物であり、その選択及び配列に創作性が認められると主張し、被告商品の取扱説明文などが著作権を侵害する旨を主張しました。

裁判所は「著作権法上の保護を受ける著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、アイデアや着想がそれ自体として著作権法の保護の対象となるものではなく、この理は編集著作物においても同様である。これを本件についてみると、上記料理法は、御飯に模様を入れる料理法というアイデアそのものであるから、それ自体は著作権法によって保護されるべき対象とはならない」として、著作権侵害を否定しました。

原告主張
原告の手続き補正書は「ごはん」「おにぎり」「ふりかけ」「具」「型当て板」の各素材を編集した編集著作物であり、その選択及び配列に創作性が認められる。
裁判所の判断
御飯に模様を入れる料理法というアイデアそのものであるから、それ自体は著作権法によって保護されるべき対象とはならない。

原告の実用新案出願明細書等に記載された料理法が「編集著作物」であるという主張はさておき(本件は本人訴訟のようです)、裁判所は、料理法はアイデアそのものである、として料理法の記載された出願明細書の著作物性を否定しています。

参考 東地判H23年 4月27日裁判所ウェブサイト

レシピブックが編集著作物に当たるとされた裁判例(大地判R2年1月27日)

本件では様々な主張がされていますが、原告の制作したレシピブックが編集著作物であるとして、被告のレシピブックの頒布が原告の複製権等を侵害すると主張した点について取り上げます。

裁判所は「原告制作物2は、スペイン料理のシェフとコラボしたレシピブックであり、料理やシェフの写真、料理のレシピを選択、分類し、料理ごとに配列したものであり、編集物の素材である料理等の写真及びレシピの選択及び配列には、一応、編集者の個性が表れている」として、原告のレシピブックの編集著作物性を認めましたが、原告と被告のレシピブックについて、「選択された素材である人物、料理等の写真及びレシピ情報そのものが異なる」ことや、配色、情報の配置、フォント等の構成、イラストの有無といった相違点を挙げ、「被告制作物2は、原告制作物2の編集著作物としての創作性を再現したものとは見られない。」として、著作権侵害を否定しました。

裁判所の判断
料理等の写真及びレシピの選択及び配列に編集者の個性が表れているレシピブックは編集著作物である。
参考 大地判R2年1月27日裁判所ウェブサイト

なお本件は控訴されていますが、控訴審でもこの部分の認定は維持されているようです。

このように、レシピそのものには著作物性は認められませんが、レシピをまとめたレシピブックに編集著作物性が認められています。

飲食店のレシピ保護について

レシピ自体に著作権が及ばないため、飲食店においてはレシピの盗用を防ぐために営業秘密として守らざるを得ない背景があります。もし、秘伝のレシピが存在する場合、営業秘密として日常的に適切に管理していたかどうかによって、そのレシピが流出してしまった場合に不正競争防止法に基づき対抗することができます。

秘伝のレシピが「営業秘密」として不正競争防止法で保護されるには、①秘密管理性、②有用性、③非公知性という3つの要件を全て満たしている必要があります。

営業秘密の管理についての詳細は、別記事で紹介しています。

営業秘密、漏れてないですか?不正競争防止法の営業秘密の保護について

食品を販売する際にその権利を保護する方法

食品販売時に活用できる知的財産の仕組みには、特許・商標登録・意匠などが挙げられます。

まず、特許を取得した場合は、他社は特許発明を実施することができなくなります。特許を取得した企業は、特許発明の実施許諾をすることによって特許から収益を得ることもできますし、情報を公にすることで、他社が模倣して作った粗悪品が世の中に出回ってしまうことを抑止する効果もあるため、自社の利益だけでなく業界全体の健全な発展のためにも積極的に特許を取得することを選択する企業もあります。

ただし、特許発明が保護されるのは特許出願から20年間という一定期間のみであり、また、特許を取得するということは、結果として情報公開することになってしまうため、あえて特許を取得せず重要な営業秘密として社内で厳重な保護下におく方法をとる食品企業もあります。有名なところでは、コカ・コーラを作る希釈シロップやケンタッキー・フライドチキンの配合などはあえて特許を取得せず、営業秘密として守ることを選択しているようです。

その他、食品販売時に特許を取得できるものとしては、製法技術や原料配合、製造装置、容器などが挙げられます。
いずれの場合も、特許を取得することが必ずしも最適解とは限らないため、Aの部分については特許を取得するが、味・品質の決め手となるBの部分は営業秘密にするなど、戦略的に特許を取得する企業もあります。

食品そのもの以外では、商品パッケージやネーミングなどの「商標登録」をするという方法もあります。2015年から始まった新しい商標の種類の中に色彩商標と位置商標がありますが、パッケージを保護する場合は特にこの2つが重要です。

新しいタイプの商標とは?平成26年商標法改正で新たに追加された商標の類型について この色づかい、商標登録できますか?裁判例からみる色商標の識別力

また、食品自体の形状と食品のパッケージについては、デザインの権利である意匠権の保護対象になっています。意匠権で保護されるためには「物品の形状、模様若しくは色彩これらの形状であって視覚を通じて美感を起こさせる」ことが必要で、商品が量産可能などの諸条件を満たすことで取得できます。意匠権の存続期間は、登録日から25年間で満了しますが、商標権は、10年ごとの更新を行えば半永久的に独占権が保護される権利であるという違いがあります。