クリエータ
クリエータ
新しいキャラクターを考えついたのですが、著作権で保護されますよね?
弁護士
弁護士
キャラクター自体は著作権では保護されないといわれているのですよ。
クリエータ
クリエータ
保護されないんですか?だったらパクり放題?
弁護士
弁護士
いえ、そういうわけでもないんです。

キャラクターを勝手にグッズ化?

マンガ、アニメや小説には魅力のあるキャラクターが沢山登場します。そのようなキャラクターを無断で使用することはできないのは明らかです。例えば、世界一有名な例のネズミ的なキャラクターのグッズを無断で作って販売したら大変なコトになりそうですよね。

実はキャラクター自体には著作権は生じないといわれており、最高裁判例もキャラクター自体の著作権を否定しています。

それなのに、なぜグッズを作って販売してはいけないのでしょうか?

キャラクターとは

そもそもキャラクターとは?

そもそもキャラクターとはいったい何でしょうか?

「キャラクターって、マンガに描かれた登場人物などのイラストのことじゃないの?」と思うかもしれません。

確かにマンガ等では、キャラクターはイラストで表現されています。一方で、小説のキャラクターは文章で表現されています。

マンガなどでキャラクターが確立するまでは沢山のイラストによって表現されていることが普通です。小説ではキャラクターの確立までにはいくつかの文章が必要でしょう。すなわち、キャラクターとはそのような沢山のイラストや文章で表される1つの概念といえます。

そうであれば、キャラクターとはイラスト自体ではなく、イラストで表現される登場人物や、動物などであるといえそうです。

キャラクターについて、著作権法の大家である中山教授は、次のように定義されています。

キャラクターとは、小説や漫画等に登場する人物や動物等の姿態、容貌、名称、役柄等の総称を指し、小説や漫画等の具体的表現から昇華したイメージである。

中山信弘 『著作権法(第3版)』(有斐閣 2020年)

「キャラクター」という概念

このように、「キャラクター」というのは、個々のイラストのような「具体的表現」から「昇華したイメージ」のことで、いわば抽象的な概念です。

これだけだとわかりづらいと思うので、ある国民的マンガのキャラクターを例にとってみましょう。

「丸い頭部をして、お腹にポケットを付けた、二足歩行する耳のない猫型ロボット」

キャラクターというのは、このような特定の登場人物を形作る概念です。あくまで特定の登場人物(この例えではロボットですが)の外観を表す個々のイラストとは区別できます。

キャラクターとイラストの違い

私たちが通常「キャラクター」と聞いて思い浮かべるものは、キャラクターを具体化してマンガに描いたイラストかもしれません。

私たちは、先ほどの「丸い頭部の…猫型ロボット」というキャラクターから想像して、具体的にマンガで描かれたイラストをイメージします。つまり、私たちが頭の中でイメージするものは、「キャラクター」そのものではなく、キャラクターを表現したイラストという「表現物」といえそうです。

このように、キャラクターというのは抽象的な概念であり、マンガに実際に描かれたイラストとは異なるものです。

アイディアの著作権について

著作物とは

それでは、なぜキャラクターには著作権が認められないのでしょうか。

まず、著作権法において著作権が認められる著作物は次のとおり定義されています。

著作権法
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

<以下略>

すなわち、著作権は「表現したもの」(例えばキャラクターが具体的に表現されたイラスト)について生じるのであり、「アイディア」については生じません

アイディアとは

「アイディア」というのは「思いつき・着想・考案」(広辞苑第六版)のことで、抽象的な概念ですから、具体的な表現とは区別されます

先ほどのマンガの話を例に挙げれば「未来からきた猫型ロボットが、様々な秘密道具を使い、小学生の男の子を手助けする物語」というのがアイディアです。

一方、著作権によって保護されるのは、あくまで「表現したもの」(著作権法2条1項1号)です。つまり、アイディアのような抽象的な概念として未だ表現されていないものは、保護の対象にはなりません。

このように、マンガに描かれる以前のアイディア段階では、未だ抽象的なイメージに過ぎず、マンガとして具体的なイラストとして表現することで、はじめて著作権の対象となります。

判例-ポパイネクタイ事件(最判平成9年7月17日)

それでは、キャラクターの著作権に関する判例の見解を確認しましょう。

ポパイネクタイ事件(最判平成9年7月17日)は、漫画ポパイの著作権を有する原告が、ポパイの図柄等を付したネクタイを販売する被告に対し、販売差止を請求したものです。

最高裁は次のとおり判示し、キャラクターの著作物性を否定しました。

「一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということはできないからである。」

すなわち、キャラクターは「抽象的概念」であって「具体的表現そのもの」ではないため、キャラクターの著作権を否定しました。

判例をみる
ポパイネクタイ事件(最判H9.7.17)

この事件は、漫画ポパイの著作権を有する原告が、ポパイの図柄等を付したネクタイを販売する被告に対し、販売差止等を請求したものです。

最高裁は次のとおり判示し、キャラクターの著作物性を否定しました。

「一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということはできないからである。」

「したがって、一話完結形式の連載漫画においては、著作権の侵害は各完結した漫画それぞれについて成立し得るものであり、著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない。」

そして、連載マンガの著作物性について

「このような連載漫画においては、後続の漫画は、先行する漫画と基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書を付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続の漫画は、先行する漫画を翻案したものということができる」「二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。」

としました。

また、後続した連載作品について

「著作権の保護期間は、各著作物ごとにそれぞれ独立して進行するものではあるが、後続の漫画に登場する人物が、先行する漫画に登場する人物と同一と認められる限り、当該登場人物については、最初に掲載された漫画の著作権の保護期間によるべきものであって、その保護期間が満了して著作権が消滅した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間がいまだ満了していないとしても、もはや著作権を主張することができないものといわざるを得ない。」と権利保護期間の満了を理由として著作権による保護を否定しました。

やはりこれまで説明してきた通り、判例も「キャラクター」と「表現」を区別し、キャラクターの著作権を否定しているということがわかります。

なお、著作権の有効期間については、キャラクターが初めて表現された時からになりそうです。

それでもキャラクターは著作権で保護される

このように、キャラクター自体は著作権法によって保護を受けることができません。では、クリエイターとしては、キャラクターの著作権をどのように守ればよいのでしょうか。

まず、キャラクターに著作権が認められなくても、マンガの中で描かれたイラストには著作権が認められます。例えば、マンガの紙面に表現されているキャラクターは美術の著作物として著作物性がある可能性が大きく、そのまま複製した場合には複製権侵害を問われかねません。

もちろん、マンガだけでなく、例えばポスターやクリアファイルなどに描かれたものや、書きおろしイラストなどの形で具体的に表現された場合、そのようなイラストにも著作権が発生します。

また、キャラクターのイラストの著作権侵害性が問題となるような場合には、著作権侵害を立証するに際して具体的なイラスト(キャラクターが描かれている具体的なコマ、ページなど)の特定をすることは不要といわれています。

よって、具体的な元のイラストを特定するまでもなく、キャラクターの本質的な特徴が感じ取れるような複製などに対しては、著作権侵害を問うことが可能です。

キャラクター自体には著作権が生じないと言われてはいますが、結局のところ、キャラクターの外観には著作権の保護が及ぶということができるでしょう。

実は、キャラクターの外観を複製した結果、著作権侵害とされた裁判例は数多くあります。

次の裁判例も、キャラクター自体は著作物ではないとしながら、図柄の複製について複製権侵害を肯定しています。

ノンタン事件(東地H10.3.30)

「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうところ、本件に即していえば、複製といいうるためには、本件商品に表示されたノンタンの図柄が本件絵本(一)のうちの特定の画面に描かれたノンタンの絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴が本件絵本(一)に描かれたノンタンを描いたものであることを知りうるものであれば足りと解される。」

「本件においては、別紙物件目録一のとおり、本件商品に表示されたノンタンの図柄は、前記一1(二)(2)に記載されたその外面的特徴を備えており、本件絵本(一)に登場するノンタンを描いたものであることを知りうるものであるから、本件絵本(一)に描かれたノンタンの絵の複製に当たる。」

「(二) なお、原告は、主位的に、本件商品にノンタンの図柄を付する行為は、著作物としてのキャラクターそれ自体を複製するものであると主張する。一般にキャラクターといわれるものは、物語等において、著作者から一定の名称、容貌、役割等の特徴を付与された登場人物や動物等を指称する概念として用いられるが、このようなキャラクターは、ある著作物の具体的表現から昇華した登場人物や動物の人格あるいは性格といった抽象的概念であって具体的表現そのものではないから、著作権法上の著作物、すなわち、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法二条一項一号)には当たらないと解される。したがって、原告の主位的主張は採用できない。」

クリエータ
クリエータ
キャラクターのイラストの本質的特徴が感じられるような複製はダメ、ということですね。結局、パクリダメ、絶対!ということですね。
弁護士
弁護士
そうですね。キャラクターの具体的表現は著作物ですし、その本質的特徴が感じられる複製は著作権侵害ということですので、結局のところ、キャラクターの外観は著作権で保護されているといえます。だから、パクり放題にはなりませんよ!