社長
社長
色だけでも商標登録できるようになりましたね。
弁護士
弁護士
そうですね。でも色彩のみからなる商標を登録するには、まず自他識別力を獲得する必要があります。
社長
社長
弊社のテーマカラーで弊社を思い出す人は多いですし、商標登録できないですかね。
弁護士
弁護士
単一の色彩のみからなる商標の場合は、さらに商標登録が難しくて、現在1件も登録されていないんですよ。

色彩のみからなる商標

平成27年4月1日より、色彩のみからなる商標が新しいタイプの商標のひとつとして商標出願の対象となりました。

色彩のみからなる商標は、大きく分けて次の3種類あります。

  • 単色
  • 複数の色の組合せ
  • 適用方法を特定した色彩(例:赤色の包丁の柄の部分)

色彩のみからなる商標は原則として識別力を欠きますので、商標登録できないのが原則です(商標法3条1項6号)。商標登録されるには、使用による識別力を獲得したものである必要があります。

また、商品や役務に慣用されている商標(例:役務「葬儀の執行」について、「黒色及び白色の組合せの色彩」の商標)、商品が通常有する色彩(例:商品「自動車用タイヤ」について「黒色」など)は登録できません。

色彩のみからなる登録商標の例

本投稿日現在、色彩のみからなる登録商標は8件あるようですが、全て色彩の組合せのみからなる商標で、単色のものは見当たりません。

色彩のみからなる商標は使用による識別力がないと登録されませんので、いずれも見覚えのあるものばかりですね。

商標見本(クリックで開きます) 番号 区分 出願人
権利者
名義人
登録5930334 16 株式会社トンボ鉛筆
登録5933289 35 (株)セブン-イレブン・ジャパン
登録6021307 35364145 (株)三井住友フィナンシャルグループ
登録6021308 36 (株)三井住友フィナンシャルグループ
登録6078470 16 三菱鉛筆(株)
登録6078471 16 三菱鉛筆(株)
登録6085064 35363943 (株)ファミリーマート
登録6201646 2930 ユーシーシー上島珈琲(株)

識別力が認められないとされた裁判例(知高判R2年3月11日)

それでは、単一の色彩のみからなる商標に識別力は認められるでしょうか。参考となる裁判例を紹介します。

原告は、次の内容の商標出願をしましたが、特許庁で拒絶査定を受け、その不服審判でも拒絶審決をうけたため、審決取消訴訟を提起しました。

原告の商標出願

商願2015-030535
役務区分:36
指定役務:インターネット上に設置された不動産に関するポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供

裁判所は

「①本願商標は、橙色の単色の色彩のみからなる商標であり、本願商標の橙色が特異な色彩であるとはいえないこと」

「②橙色は、広告やウェブサイトのデザインにおいて、前向きで活力のある印象を与える色彩として一般に利用されており、不動産の売買、賃貸の仲介等の不動産業者のウェブサイトにおいても、ロゴマーク、その他の文字、枠、アイコン等の図形、背景等を装飾する色彩として普通に使用されていること」

「③原告ウェブサイトのトップページにおいても、別紙2のとおり、最上部左に位置する図形と「LIFULL HOME’S」の文字によって構成されたロゴマーク、その他の文字、白抜きの文字及びクリックするボタンの背景や図形、キャラクターの絵、バナー等の色彩として、本願商標の橙色が使用されているが、これらの文字、図形等から分離して本願商標の橙色のみが使用されているとはいえないこと」から、

「原告ウェブサイトに接した需要者においては、本願商標の橙色は、ウェブサイトの文字、アイコンの図形、背景等を装飾する色彩として使用されているものと認識するにとどまり、本願商標の橙色のみが独立して、原告の業務に係る「ポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供」の役務を表示するものとして認識するものと認めることはできない」としました。

また、原告の事業の売上高が高額なことは識別力獲得の根拠とはならず、原告のアンケート結果も「いわば正解をほのめかされた状態で回答している」(第一次調査)、「偶然に原告ウェブサイトを選択する確率は、必然的に高くなるというべきである」にもかからず、原告ウェブサイトと回答した率が高くない(第2次調査)ことをもって、原告の商標が、その使用により自他役務の識別機能ないし自他役務識別力を獲得したとはいえないとしました。

原告のウェブページ画像(判決別紙より抜粋)

単一の色彩のみからなる商標の登録はハードルが高い

上記裁判例が示したとおり、商標登録をしようとする色が一般的なものであったり、文字、図形から分離して使用されていない場合には、単一の色彩のみからなる商標の登録は認められにくいと思われます。

普通に用いられていない特殊な色が、文字、図形から分離して使用された結果、識別力を獲得したといえる場合(どんな場合かは想像もつきませんので、裁判例等の蓄積を待つほかありません)には、単一の色彩のみからなる商標の登録が認められる余地があるかもしれませんが、かなり登録のハードルは高いと思われます。

社長
社長
単一色の場合にはハードルが高すぎますね。
弁護士
弁護士
色の組合せなどでしたら商標登録の可能性がありますので、まずは識別力を獲得することですね。
社長
社長
この色といえば弊社!と認識されるよう頑張ります。
笠原 基広