【概要】図形商標と、その類否の判断手段

図形商標とはその名の通り、図形によって構成された商標をいいます。

一般的に、商標の類否は外観、観念、称呼等を考慮し、その具体的な取引状況に基づいて総合的に判断されます。

図形商標の場合には、主に外観が問題となりますが、図形から観念、称呼が生じる場合はこれらも考慮して、具体的な取引状況に基づいて判断されます。

詳しくは以下をご覧ください。

◆商標の類型

わが国で登録が認められる商標は、次のようなものに大別されます。また、これらのうち複数を結合した商標は結合商標といわれています。

商標の類型
  1. 文字商標
  2. 図形商標
  3. 記号商標
  4. 立体商標
  5. 動き商標
  6. ホログラム商標
  7. 色彩のみからなる商標
  8. 音商標
  9. 位置商標
  10. 動き商標
  11. ホログラム商標
  12. 色彩のみからなる商標
  13. 音商標
  14. 位置商標

なお、⑩~⑭は平成27年4月1日から出願受付開始となった、比較的新しい類型の商標です。

◆図形商標とは

図形商標とは、図形によって構成される商標です。

例えばスターバックス・コーポレーションがスターバックスコーヒーチェーンに使用する商標は、以前は「STARBUCKS COFFEE」という文字と、セイレーンの図柄との結合商標でしたが、近年は図形商標へと変遷しています。


登録番号 第4806987号
指定商品等 第18 25 30 43類

第5737384号
登録番号 第5737384号
指定商品等 第29 30 32 35 43類

◆図形商標の類否

それでは、図形商標の類否はどのように判断されるでしょうか。

一般的に商標の類否は、次の3つの要素を勘案し、出所混同のおそれがあるか否かによって判断されます。

商標の類否判断要素
  • 外観
  • 観念
  • 称呼

外観とは商標の見た目、観念とは商標から生じる意味内容、称呼(しょうこ)とは商標を読んだ場合の音のことをいいます。これらは商標の類否の重要な判断要素ではありますが、最終的には諸事情を考慮し全体的に考察した上で、具体的な取引状況に基づいて判断します。

商標の類否について、最高裁は次のとおり言及しています。

商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断する(最小判昭和43年2月27日・昭和39(行ツ)110(しょうざん事件)最小判平成9年3月11日・ 平成6(オ)1102(小僧寿し事件))。

一般的に図形商標には、称呼及び観念が生じない場合があります。例えば、上記の結合商標(第4806987号)の商標登録公報には「【称呼(参考情報)】 スターバックスコーヒー、スターバックス」という記載がありますが、図形商標(第5737384号)のほうにはそのような称呼に関する記載がありません(なお、上記登録商標はかなり有名ですので称呼・観念が生じていないとは言い切れません)。

図形商標に称呼及び観念が生じていない場合には、外観の類否が重要となってきます。外観が紛らわしく、視覚的に商品・役務の混同を生じるよう危険がある場合に、商標が類似とされます。

他方で、図形商標より称呼・観念が生じる場合があります。図形が何かの外観を模したものであるような場合は、称呼・観念が生じることも多いです。

そのような場合には、称呼・観念も勘案して、類否を判断することになります。

◆裁判例 東高判昭和55年3月31日・昭和52(行ケ)157

少し古いですが、図形商標の類否が問題となった裁判例をご紹介します。

本件では、次の本件商標には、取引の実情を考慮すれば「サトちゃん」という観念、称呼のみが生じ、引用商標とは外観が異なるため非類似とされています。両者はゾウという点では共通しますが、本件商標は単なるゾウではなく「サトちゃん」として認識されていると判断されました。

本件商標
sato-chan
登録番号 第0830827号
引用商標
420545
登録番号 第0420545号

以上認定の事実と本件商標のごとく図形のみからなる商標から生ずる称呼、観念の性質、すなわち、商標の称呼、観念は本来自他商品の識別を目的として生ずるものであるから、需要者、取引者はその商標を一面では簡易明快に称呼、観念しようとすると同時に、他面またできる限り当該商標(図形)の示す特定の意味内容に相応しく適切正確に称呼、観念しようとするものであること(たとえば、のらくろの図形を描いた商標であれば、これを「イヌ」(犬)と称呼、観念するよりは「ノラクロ」(のらくろ)と称呼、観念しようとする。)を考え合わせると、本件商標の登録査定のされた昭和四四年八月当時においては、本件商標の図形が象の本質的特徴である長い鼻、扁平な耳朶をなお具備しているところから、需要者のうちに稀にはこれを「ゾウ」(象)、「コゾウ」(小象)「チビゾウ」(ちび象)と称呼、観念する者が全くなかつたわけではないとしても、それをもつて、本件商標の類否を決するのは当を得ないものであり、商標類否の判断の観点から見るときは、そのような称呼、観念は生ぜず、個性化された特色ある本件商標の具体的構成に即して、「サトちやん」の称呼及び単なる象(あるいは小象、チビ象)とは異なる本件商標の図形の小象(すなわち「サトちやん」)の観念のみが生ずると認めるのが相当である。
本件商標からは、「サトちやん」以外の単なる「ゾウ」(象)の称呼、観念も生ずるという被告の主張は採用しえない。
東高判昭和55年3月31日・昭和52(行ケ)157

図形商標は外観が重要だが、観念・称呼も生じ得る

図形商標の類否には、外観が最重要な要素となります。

しかし、図形商標にも観念・称呼が生じうる余地があります。その場合には外観だけでなく、観念・称呼の類否も検討したうえで、取引の実情も考慮して類否が判断されることになります。

また、上記裁判例のように、商標の使用に伴い獲得された観念・称呼も考慮されることになります。

文字商標と異なり称呼が生じにくい図形商標は、先行商標の検索にもコツが必要です。ブランドロゴを図形に決める際には、事前に専門家に相談されるのをお奨めします。

笠原 基広