1.著作者の死後、著作権はどうなるのか?
著作物を創作した人は、原則的には著作財産権、著作者人格権を取得します。
人(自然人)の取得した著作権は、著作者死亡後には概ね次のとおりとなります。
- 著作財産権は、原則的には著作者の死後70年間存続する。
- 著作財産権は、相続財産となる。
- 著作者人格権は、相続されない。
- 著作者の死後も、その人格的利益には、一定の保護がある。
- 著作者の死後の人格的利益が侵害された場合、侵害者は、差止等の民事上の請求や、刑事罰を受けることがある。
2.著作権の保護期間
著作権は、著作物の創作のときに発生し、著作者の死後70年間(共同著作物の場合には、最後に死亡した著作者の死後70年間)存続するのが原則です(著作権法51条)。この保護期間は、正確には著作者が死亡した日の属する年の翌年から起算します(57条)。
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第五十一条 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)七十年を経過するまでの間、存続する。
従前の保護期間は著作者の死後50年間でしたが、平成30年12月30日施行の改正著作権法では70年間に延長されました。これは、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効によるものです。
ただし、無名、変名の著作物の著作権は、公表後70年間です。周知の変名の場合(例えば、手塚治虫先生)はこれに含まれず、保護期間は原則どおり死後70年間となります。
著作権者が死亡した場合、著作財産権は相続財産となります。
相続人不存在の場合、一般的に土地などの相続財産は国庫に帰属することになります。しかし、著作財産権の場合には著作権は消滅し、パブリックドメインとなります(62条)。
3.死後の著作者の人格的利益の保護
著作者は存命中には著作者人格権を有します。著作者人格権は次の権利を含みます。
3.1 公表権(18条)
自分の著作物で、まだ公表されていないものを公表するかしないか、するとすれば、いつ、どのような方法で公表するかを決めることができる権利
3.2 氏名表示権(19条)
自分の著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、するとすれば、実名か変名かを決めることができる権利
3.3 同一性保持権(20条)
自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利
これらの著作者人格権は譲渡することができない一身専属権ですので(59条)、著作者が死亡しても相続されません。
4.死後の著作者の人格的利益の保護
著作者人格権は相続されませんが、著作者の死後もその人格権は一定の保護を受けます。
著作者の死後であっても、著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をすることはできません(60条)。
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(著作者が存しなくなつた後における人格的利益の保護)
第六十条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
すなわち、著作物を公衆に提供・提示する者は、著作者が存命であるとしたなら公表権、氏名表示権、同一性保持権を侵害する行為や、著作者人格権を侵害するとみなされる行為(113条)をすることはできません。これは、著作物を公衆に提供・提示する態様での利用の場合に限られ、その他の態様で利用する場合は含まれません。
ただし、行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が著作者の意を害しないと認められる場合は、侵害となりません(60条ただし書)。
5.著作者の遺族の権利
著作者の遺族は、著作者の死後の人格的利益の侵害に対し、侵害の差止め、予防等や、侵害行為者に故意過失がある場合には名誉回復等の措置を請求することができます(116条1項)。
ここでいう遺族は、著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹といった一定の範囲の遺族に限られますが、著作者は遺言によってこれ以外の者を指定することもできます。ただし、指定を受けた者が請求をできる期間には制限があります(著作者死亡の翌年から70年経過か、遺族全員死亡のうち、到来が遅いときまで)。
また、遺族の名誉感情が害された場合には、遺族は固有の損害賠償請求権を有します。
6.刑事罰
著作者の死後の人格的的利益を故意に侵害した者は、500万円以下の罰金に処せられます(120条)。これは非親告罪です。
生前の著作者人格権侵害に対する刑事罰は、10年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金又はその併科(119条1項)であり、非親告罪(123条1項)であるのとは若干異なります。
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