ダウンロード違法化について

先日、漫画村の元運営者が著作権法違反等で懲役4年6か月を求刑されました。この漫画村事件以降も違法コンテンツの提供サイトは後を絶たず、また、違法コンテンツへのリンクを集積したリーチサイトも乱立しており、コンテンツホルダーに莫大な損害が生じています。

従前の著作権法の基本的な考えでは、違法コンテンツであろうと、ダウンロードやリンクをするだけで著作権侵害となることはありませんでした。ダウンロードは私的複製(30条)の範囲内ですし、リンクに至っては著作権侵害には当てはまらないからです。

しかし、著作権侵害防止の実効性を図るために法が整備され、まず映像・音楽の違法コンテンツのダウンロードが違法化されました。さらに漫画村事件のような違法ダウンロードサイトが問題視されるようになったことから、著作物の種類を問わず違法コンテンツのダウンロードが原則的には違法になりました。

人気漫画を無断で掲載した海賊版サイト「漫画村」の運営者とされ、著作権法違反(公衆送信権の侵害など)と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の罪に問われた住所不定、無職星野路実(ろみ)被告(29)の論告求刑公判が7日、福岡地裁(神原浩裁判長)であった。検察側は懲役4年6カ月と罰金1千万円、追徴金約6257万円を求刑し、結審した。判決は6月2日。
漫画村の運営者に懲役4年6カ月求刑 著作権法違反など:朝日新聞デジタル

令和3年1月1日より改正著作権法が施行され、全ての著作物についてダウンロードが違法となる要件が定まりました。本稿では、改正著作権法のダウンロード違法化について取り上げます。

違法ダウンロードの2つの類型

私的複製の範囲内で行う著作物の複製は基本的には適法です(著作権法30条1項柱書)。ただし、違法アップロードされたコンテンツのダウンロードは私的複製の範囲から除外され、違法となりました(30条1項3号、4号)。

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著作権法
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

(省略)

三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
四 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)

違法とされるダウンロード行為は、次のようなものです。

違法ダウンロード
  • 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(特定侵害録音録画)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行うこと
  • 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(特定侵害複製)であることを、特定侵害複製であることを知りながら行うこと

特定侵害録音録画について

著作権者に無断でサーバーにアップロードされている動画・音楽ファイルをダウンロードすることなどがこれにあたります。

対象となる行為

本号(3号)の対象となるダウンロードによる複製行為は録音・録画に限られ、それ以外の複製行為は4号で規制されます。なお、特定侵害録音録画は今回の改正前から違法化されていましたが、今回の改正によって特定侵害複製が違法化されるにあたり加重された要件は、特定侵害録音録画には適用されないことになりました。著作物の性質の違いを反映し、また、パブリックコメント等を考慮した結果といわれています。

著作権を侵害する自動公衆送信を受信すること

「著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行う」ものですので、複製権、公衆送信権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利などを侵害して自動公衆送信されている著作物のダウンロードに限られます。著作者が適法にアップロードしたものや、引用の要件を充たすものはこれにあたりません。

また、単に著作者人格権を侵害する自動公衆送信もこれにあたらないといわれています。

デジタル方式であること

ここでいう録音・録画はデジタル方式のものですので、ダウンロードしたものをアナログ機器で録音・録画することを含みません。また、プリントアウトも含みません。

自動公衆送信を受信して行うこと

自動公衆送信を受信して行う録画・録音ですので、有体物(CD-ROMなど)に格納されて頒布されるものや、メールで送られるものは含みません。

録音・録画を行うこと

録音・録画ですので、ストリーミングによる視聴を含みません。

なお、ストリーミングの場合にコンピュータ等にはキャッシュ(一時ファイル)が保存されますが、これは録音・録画にはあたりません(47条の4第1項)。もちろん、ストリーミングをデジタルで録音、録画、ファイル保存などすると、録音・録画にあたります。

国外サーバからの送信も含まれる

「国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの」は、本号の自動公衆送信に含まれます。

すなわち、国内でアップロードしたら違法になるような著作物であれば、海外のサーバにアップロードされていたとしても、国内でダウンロードすれば違法となります。「海外サーバだから」というような言い訳は通用しません。

特定侵害録音録画にあたらない場合
  • 著作者人格権のみを侵害する自動公衆送信による場合
  • 自動公衆送信されていない場合(CDの頒布、メール送付)
  • デジタル方式の録音・録画でない場合(アナログ録音・録画、プリントアウト)
  • ストリーミングによる視聴の場合

特定侵害複製について

特定侵害複製は、改正著作権法で新たに加わった類型です。

改正前は、音楽・動画コンテンツ以外のコンテンツについてダウンロードは違法化されていませんでしたが、海賊盤対策の実効性を担保するため、特定侵害複製が新たに加えられました。

対象となる著作物

本号の対象となるのは、音楽・映像以外の著作物全般のダウンロードであり、マンガ、書籍、論文、コンピュータプログラム、ゲームなどがこれに含まれます。

複製であること

複製(ダウンロード)されることが必要で、単なる閲覧を含みません。スクリーンショットも複製の一種として含まれます(後述の写り込みを除く)。

単なる閲覧に伴うキャッシュ(一時ファイル)の保存は含まれません。

その他

その他については、特定侵害録音録画と同じです。

特定侵害複製にあたらないもの
  • 著作者人格権のみを侵害する自動公衆送信による場合
  • 自動公衆送信でない場合(CDの頒布、メール送付)
  • デジタル方式の複製でない場合(アナログ撮影、プリントアウト)
  • 単なる閲覧の場合

知りながら複製等をすること

特定侵害録音録画、特定侵害複製であることを「知りながら」ダウンロードした場合のみ違法となります。アップロードが違法であることを知らなかった場合、適法か違法か不明な場合、適法だと誤認した場合にはこの要件を充足せず、ダウンロードしても違法となりません。

なお、今日、適法にアップロードされたコンテンツであることを示す識別マークとして、エルマークやABJマークがあります。

エルマークは、一般社団法人日本レコード協会(RIAJ)に所属しているレコード会社・映像製作会社と正規に契約を結んでコンテンツを公開しているサイトに表示されるものです。

ABJ(Authorized Books of Japan)マークは、正規版マーク事業組合の委託により一般社団法人 電子出版制作・流通協議会が付与するマークで、適法な電子出版物を提供するサイトに表示されます。

それぞれ固有の管理番号が付された上で表示され、かつ、上記団体のサイトには識別マークの使用が許諾された事業者のリストが掲載されています。

ただし、このようなマークが付されていない違法サイトからダウンロードしたからといって、直ちに特定侵害録音録画、特定侵害複製であることを「知りながら」行ったことにはなりません。

例外規定

国民による正当な情報収集等を萎縮させることを防止するため、ダウンロード違法化には次のような例外があります。この例外のうちは特定侵害録音録画と複製に共通ですが、及びは特定侵害複製のみに適用され、録音録画には適用がないので要注意です。

例外
  1. スクリーンショット等の写り込みの場合(30条の2)
  2. 特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合(30条2項)
  3. 軽微な複製の場合(30条4項かっこ書き)
  4. 二次創作・パロディの複製の場合(30条4項かっこ書き)
  5. 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある複製の場合(30条4項かっこ書き)

スクリーンショット等の写り込みの場合

スクリーンショットをした場合に、違法にアップロードされた著作物(アニメキャラのアイコンなど)が写り込むような場合です。

写真撮影や録音・録画などをするにあたって、主たる被写体に付随して写り込んだ著作物については、軽微な構成部分に留まるものであれば、正当な範囲内で、どのような方法でも利用できます。ただし、著作権者の利益を不当に害することはできません(著作権法30条の2)。

写り込みに関しては以下もご参照下さい。

重大な過失により特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを知らなかった場合

重大な過失とは著しい不注意のことをいいます。有名な違法サイトであるのに著しい不注意によってそれを知らずにダウンロードしたような場合がこれにあたります。もちろん普通の過失によって知らなかった場合のダウンロードも違法とはなりません。

軽微な複製の場合

SNSなどに違法にアップロードされた漫画の1コマのダウンロードなど、日常的に行われているような軽微な行為については、違法にはなりません。

文化庁の見解によると、軽微なものの例として、次のようなものが挙げられています。

1.典型的には、数十頁で構成される漫画の1コマ~数コマ、長文で構成される論文や新聞記事の数行など、その著作物全体の分量から見て、ダウンロードされる分量がごく小さい場合は、「軽微なもの」と認められます。一方で、漫画の1話の半分程度、論文や新聞記事の半分程度のダウンロードは「軽微なもの」とは言えません。

2.このほか、画質が低く、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合も「軽微なもの」と認められます。

3.なお、上記は典型例を示したものであり、著作物の種類・性質や、著作物全体の中での複製する部分の位置付け等に応じて、これら以外にも「軽微なもの」に該当する場合はあり得ると考えられます(争いとなった場合には、個別事情を考慮して裁判所で判断されるものです)。 令和3年1月1日施行 侵害コンテンツのダウンロード違法化について | 文化庁

この軽微性は量だけではなく、著作物の性質等を総合考慮して判断されます。たとえ大部の漫画の数コマだからといって、核心部分(ネタバレ)であれば、軽微とはいえないと判断される可能性もあります。

また、実際には軽微ではないものを「軽微なもの」と勘違いしてダウンロードした場合、例えば、数十ページあるマンガの一コマと思ってダウンロードしたが、それが一コママンガだった場合など、は、違法とはなりません。

翻訳以外の二次的著作物(二次創作・パロディ)の複製の場合

二次創作・パロディをこれらの著作権者がアップロードした場合、原著作権者の著作権(28条の権利)を侵害する可能性があります。しかし、そのような場合であっても、特定侵害複製における「著作権を侵害する自動公衆送信」にはあたらないものとされました。すなわち、二次的著作物の著作権者がアップロードした二次創作・パロディをダウンロードしても違法とはなりません。

二次創作で原作の売り上げに悪影響を与えるのは少ないこと、二次創作・パロディは著作者に黙認されることが多いという実態があり、コンテンツ産業の発達に重要な機能を果たしていること、がその理由とされています。

なお、二次的著作物のうち翻訳物はこれに含まれず、勝手に翻訳されたマンガのダウンロードは違法となりますので、注意しましょう。

また、二次創作等をその著作権者以外の者がアップロードした場合には普通の違法アップロードですので、ダウンロードすると違法となります。

著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情のある複製の場合

この規定は、国民の正当な情報収集等を萎縮させることを防止するため、様々な要素に照らして、違法化対象からの除外を判断できるバスケットクローズ規定(安全弁)として設けられました。

ダウンロードした者が「不当に害しない」という立証責任を負担します。また「特別な事情」をダウンロードした者が立証する必要がありますので、海賊盤などを楽しむためにダウンロードしているような場合にはおよそこれには該当しないことになります。

民事責任について

上記の要件を充たす違法ダウンロードの場合には、適法な私的利用の為の複製とはなりませんので、著作権者の複製権を侵害します。

よって、複製権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)や、差止め等(著作権法112条)の対象となります。

刑事罰について

違法ダウンロードには刑事罰が科されますが、上記の要件を充たす違法なダウンロード行為のうち、次の要件が加重された特に悪質な行為に限られます(119条3項)。なお、特定侵害録音録画の場合には、継続・反復の要件は加重されませんので、ご注意下さい。

刑事罰の要件
  • 正規版が有償で提供されていることを知っていたこと
  • 継続的に又は反復して行うこと(複製の場合のみ)
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著作権法
第百十九条

3 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)又は著作隣接権を侵害する送信可能化(国外で行われる送信可能化であつて、国内で行われたとしたならば著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
二 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為(当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)を継続的に又は反復して行つた者

これらは全て親告罪です。刑事罰は「二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています。

コメント

このように、全ての種類の著作物について、ダウンロード違法化が図られました。

なお、平成24年10月1日より音楽・動画の違法ダウンロードに刑事罰が科されるようになって8年以上が経過しましたが、違法ダウンロードをした者が逮捕された例はほとんどありません。

とはいえ、今後も逮捕者がでないとは限りませんし、違法ダウンロードを厳に慎むべきであることは言うまでもありません。