著作権法における著作物不正利用の規制

ネットやデジタル放送を通じて提供される is映画、テレビ番組、楽曲や、電子書籍といったデジタルコンテンツには、コピーが容易であり、しかもコピーによって劣化しないという特性があります。しかし、不正にコピーされたものが広まると、正規のコンテンツを利用する人が減ってしまい、コンテンツホルダーに経済的な不利益が生じます。

そのような事態を防止するため、デジタルコンテンツには不正なコピーを妨げるコピーコントロールや、これに併せて、不正な視聴を妨げるアクセスコントロールが施されていることがあります。

技術的にコピーやアクセスを制限するこれらの手段に対し、制限を回避する手段が普及してしまうと、その実効性が損なわれ、ひいてはコンテンツホルダーの利益も損なわれます。現実に、DVD-Videoのアクセスコントロール技術であるCSSに対しては、直ぐに回避ソフトウェアが普及し、容易にDVD-Videoのリッピングができるようになってしまいました。

そこで今日では、これらのコントロール手段は法で保護されています。例えば、不正競争防止法においては、コピーコントロール手段、アクセスコントロール手段は技術的制限手段と定義され、これらを回避する装置等の譲渡や提供をすると民事・刑事の責任を負うことになります。

不正競争防止法に加えて、コピーコントロール手段、アクセスコントロール手段は著作権法でも保護されています。

著作権法ではこれらは技術的保護手段技術的利用制限手段として定義され、これらを回避して行う複製は私的複製の範囲から除外され、著作権を侵害します。

今回は、この著作権法における技術的保護手段、技術的利用制限手段について取り上げました。

不正競争防止法

コピーコントロール技術・アクセスコントロール技術=技術的制限手段

著作権法

コピーコントロール手段=技術的保護手段

アクセスコントロール手段=技術的利用制限手段

技術的保護手段・技術的利用制限手段について

従来の著作権法の考え方では、家庭内で行われる複製は「私的複製」として著作権を侵害しないとされていました。

しかし、著作権法は技術的保護手段(コピーコントロール)と技術的利用制限手段(アクセスコントロール)を定義し(2条1項20号)、これらを回避した複製行為を私的複製の範囲から除外しました。よって、技術的保護手段・技術的利用制限手段を回避して行う複製は、著作権者の複製権を侵害します。

不正競争行為と同様、これらの手段は暗号式と信号式に大別されます。

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著作権法
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
二十 技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号、第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第四号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第六項において同じ。)を制限する手段(著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

技術的保護手段の要件は次のとおりです。

技術的保護手段
  • 電磁的方法により
  • 著作者人格権、著作権、著作隣接権を侵害する行為の防止又は抑止をする手段であって、
  • 著作物の利用に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録、送信する方式、又は、
  • 当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式

一方で、技術的利用制限手段の要件は次のとおりです。

技術的利用制限手段
  • 電磁的方法により、
  • 著作物等の視聴を制限する手段であつて、
  • 著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録、送信する方式、又は
  • 当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、送信する方式

簡単にいうと次の4つの手段となります。

4つの類型
  • コピーコントロール信号を記録・送信して著作物等の複製を制限する手段
  • 暗号化して著作物等の複製を制限する手段
  • アクセスコントロール信号を記録・送信して著作物等の視聴を制限する手段
  • 暗号化によって著作物等の視聴を制限する手段

著作権侵害となる行為

技術的保護手段・技術的利用制限手段を回避して、著作権侵害となるのはどのような行為でしょうか。

著作権法は個人的又は家庭内で他人の著作物を複製しても私的複製として著作権を侵害しない旨規定します。

しかし、技術的保護手段・技術的利用制限手段を回避して可能となった複製行為や、その結果に障害が生じないようになった複製行為をその事実を知りながら行う場合、この私的複製から除外されます(30条1項2号)。

著作権を侵害する行為
  • 技術的保護手段・技術的利用制限手段を回避して可能となった複製行為を、その事実を知りながら行うこと
  • 技術的保護手段・技術的利用制限手段を回避して障害が生じないようになった複製行為を、その事実を知りながら行うこと

(4月11日、ご指摘を受け修正いたしました)

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著作権法
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
二 技術的保護手段の回避(第二条第一項第二十号に規定する信号の除去若しくは改変その他の当該信号の効果を妨げる行為(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約によるものを除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすること(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)をいう。第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

民事的責任

技術的保護手段・技術的利用制限手段を回避した複製行為をその事実を知りながら行うと、もはや私的複製とはなりませんので、著作権者が専有する「複製権」を侵害する著作権侵害行為として、損害賠償、差止めの対象となります。

不正競争防止法の技術的制限手段の場合には、技術的制限手段を回避する装置の譲渡、提供、そのような役務提供が違法とされているのに対し、著作権法では複製行為のみで違法となります。よって、技術的制限手段の単純使用など不正競争防止法上は違法でないことも、複製行為を伴えば、著作権法上は違法となります。

また、不正競争防止法の技術的制限手段の対象となるのは影像、音、プログラムその他の情報というようなデジタルコンテンツであり、特に著作物性には言及されていません。よって、不正競争防止法においては技術的制限手段の回避のみで違法となりますが、著作権法で保護されるのは著作物のみです。

刑事罰

著作権法の技術的保護手段・技術的利用制限手段の回避による複製自体には刑事罰はありません。民事的な責任を負うのみです。

技術的保護・利用制限手段回避装置・回避プログラムの複製物の公衆への譲渡等を行った者(120 条の2第1号)、業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行った者(同2号)は、三年以下の懲役、三百万円以下の罰金、又はこれらの併科となります。これは非親告罪ですので、被害者の告訴がなくとも公訴提起されます。

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著作権法
第百二十条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 技術的保護手段の回避若しくは技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避若しくは技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とし、又は第百十三条第六項の規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を技術的利用制限手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者
二 業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避又は技術的利用制限手段の回避を行つた者

不正競争防止法の場合は、図利加害目的で技術的制限手段の無効化手段の販売等を行うと5年以下の懲役、500万円以下の罰金、又はこれらの併科となります(不競法21条2項4号)。同様の行為ですが、不正競争防止法のほうが罪が重くなっています。

現実に問題となり得る行為

様々な現実の行為が問題となり得ますが、著作権法と不正競争防止法における責任が異なりますので、例を挙げて整理しました。

DVDのリッピング

リッピング行為は複製を伴うので、技術的利用制限手段を回避した著作物の複製となり、知りながら行うと著作権法上の複製権侵害となります。

一方で、不正競争防止法上の責任が生じるのは技術的制限手段の装置等の販売等ですので、自身で行うリッピング行為自体は不正競争行為とはなりません。

リッピングソフトウェアの譲渡等は著作権法における刑事罰の対象となります。また、不正競争行為となりますので、民事、刑事両方の責任を負います。

B-CASカード

不正B-CASカードの使用は著作物の複製を伴いませんので、録画しない限り著作権法上の複製権侵害とはなりません。また、不正B-CASカードは使用のみでは不正競争行為にもなりません。しかし、不正B-CASカードを使用すると刑法上の不正作出私電磁的記録供用罪となり、送検される人も続出しています。

不正B-CASカードの販売等は不正競争行為となります。

テレビの有料放送を無料で見られるよう不正に改造された「B―CAS(ビーキャス)カード」を使ったとして、大阪海上保安監部が3月、山口県内の貨物船の男性船長(59)を不正作出私電磁的記録供用の疑いで書類送検したことが、捜査関係者への取材で明らかになった。
「有料テレビも無料で映る」船舶でBーCASカード不正横行 海保、5年で117件摘発 | 毎日新聞

マジコン

マジコンは著作物を複製しませんので、販売、利用共に著作権侵害とはなりません。一方で、その販売等は不正競争行為となります。

重畳的な保護

このように、コピーコントロール・アクセスコントロールの回避は、その要件こそ微妙に異なりますが、不正競争防止法、著作権法で違法とされています。また、不正B-CASカードの使用などはさらに刑法上の不正作出私電磁的記録供用罪を構成します。

さらに、不正コンテンツのダウンロードも違法化されました。

違法となる危険を冒してまで、不正コンテンツを利用するメリットはありません。カジュアルに不正コンテンツを利用することのないようにしたいものです。