BL同人マンガなどの二次創作物でも著作権侵害されたら権利行使できますか?BL同人マンガ裁判で争われた二次的著作物の著作権

二次創作物とは

既存の作品を利用して二次的に創作された作品は、一般的に二次創作物などとよばれています。既存のゲームやアニメ、マンガのキャラクターを用いて別のマンガなどを作成する、いわゆる同人作品や、BLマンガ(これらにはもちろんオリジナルのものもありますので、同人マンガ、BLマンガ=二次創作とは必ずしもいえません)にも、そのような作品は多いです。

これと似ている著作権法上の用語として「二次的著作物」があります。

二次的著作物とは「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」のことをいいます。二次創作物は必ずしも二次的著作物とは限らず、著作物に新たに創作性を加えていないもの(単なる模写等)などは、二次的著作物とはなりません。

著作権法
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

それでは、二次創作物の著作権者は誰になるのでしょうか。

二次創作物の著作者は

二次創作物としてのいわゆるBLマンガについて考えてみましょう。BLマンガにも色々あると思うのですが、ここでは元となる作品のキャラクターに、新たにいろいろなストーリー展開(例えば男性同士の恋愛)をさせるようなマンガのことをいうものとします。その場合の著作者は誰になるでしょうか。

まず、マンガのキャラクター自体は著作物ではないといわれています。これについて、最高裁判例は次のとおり述べています。

判例
漫画の「キャラクター」は、一般的には、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないから、著作物に当たらない(最高裁判所平成4年(オ)第1443号、同9年7月17日第一小法廷判決、民集51巻6号2714頁)。

このように、キャラクター自体は著作物ではありませんが、そのキャラクターの具体的表現、例えば、キャラクターのイラストなどは著作物となり得ます。
キャラクターは著作権で保護されますか?最高裁判例が明らかにしたキャラクターの法的性質とは。

そうすると、元の著作物のキャラクターの容姿、服装などをそのまま活かして二次創作したマンガの場合には、誰が著作者になるのでしょうか。

前記判例で裁判所は、シリーズ物のアニメの著作権について、次のように述べています。

判例
シリーズもののアニメの後続部分は、先行するアニメと基本的な発想、設定のほか、主人公を初めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書きを付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続のアニメは、先行するアニメを翻案したものであって、先行するアニメを原著作物とする二次的著作物と解される。

二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分について生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じない。

二次創作物についても、著作権は二次創作物において新たに付与された創作的部分について生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないということができそうです。

注意
元の著作物の著作権者に無断で二次創作をすると著作権を侵害する場合がありますので、ご注意ください。二次創作物の新たな創作的部分に著作権が生じるからといって、元の著作物の著作権を侵害しないということはありません。

BLマンガの著作権侵害が争われた裁判例(知高判R2年10月6日)

本件は、BL同人マンガの著作者である原告が、被告に対し、原告が著作したマンガを被告が運営するウェブサイトに無断で掲載した行為は原告の著作権(公衆送信権)を侵害するとして、損害賠償を求めた事件の控訴審です。なお本稿では一審原告(マンガを書いた方)を原告、一審被告(原告のマンガを無断でウェブサイトに掲載した方)らを被告といいます。

参考 控訴審:知高判R2年10月6日裁判所ウェブサイト 参考 原審:東地判R2年2月14日裁判所ウェブサイト

原告著作物は「ユーリ!!! on ICE」「刀剣乱舞」「ダイヤのA」「ハイキュー!!」「TIGER & BUNNY」「おそまつさん」「FREE!」といった著名な作品をもとにする作品だったようです。

被告は、次の理由を挙げ、被告に対する権利行使は信義則違反又は権利濫用である旨の主張をしています。なお、他にもいろいろな争点がありますが、本稿ではこれらのみを取り上げます。

被告の主張
  • 原告のマンガは原著作物に依拠して作成されており、原著作物のキャラクターが複製されており、著作権侵害であるから、権利行使は許されない
  • 原告のマンガはわいせつ文書に当たるから、そのような文書に基づいて権利行使をすることは許されない

被告が主張する「原告は著作権侵害をしているので権利行使が許されない」旨の主張について、裁判所は、被告の主張はそれ自体失当であるとしながらも、上記最高裁判例に基づいて、キャラクターには著作物性がなく「本件各漫画のキャラクターが原著作物のそれと同一あるいは類似であるからといって、これによって著作権侵害の問題が生じるものではない。」としました。

その上で、「シリーズもののアニメに対する著作権侵害を主張する場合には、そのアニメのどのシーンの著作権侵害を主張するのかを特定するとともに、そのシーンがアニメの続行部分に当たる場合には、その続行部分において新たに付与された創作的部分を特定する必要がある」とし、「一審被告らの主張のほとんどは、原著作物のどのシーンに係る著作権が侵害されたのかを特定しない主張であって、主張として不十分」「結局、著作権侵害の主張立証としては不十分であるといわざるを得ない。」「仮に原著作物のシーンが特定されたとしても、著作権侵害が問題となり得るのは、主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分(複製権侵害)に限られるものといわざるを得ない」としました。

さらに、裁判所は「なお、本件各漫画の内容に照らしてみれば、主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分以外の部分について、オリジナリティを認めることは十分に可能というべきである。」として、原告のマンガにオリジナリティを認め、原著作物に対する著作権侵害が認められない場合はもちろん、認められる場合であっても、原告が、オリジナリティがあり、二次的著作権が成立し得る部分に基づき、本件各漫画の著作権侵害を主張し、損害賠償等を求めることが権利の濫用に当たるということはできない」として、被告の主張を排斥しました。

わいせつ性については、「本件各漫画全体を検討してみても、それらが甚だしいわいせつ文書であって、これに基づく著作権侵害を主張し、損害賠償を求めることが権利の濫用に当たるとか、そのような損害賠償請求を認めることが公序良俗に違反するとまで認めることはできない。」として、被告主張を排斥しました。

本件における裁判所の判示をまとめると次のとおりとなります。

裁判所の判断
  • キャラクター自体には著作権が生じない。
  • 二次的著作物の場合、原著作物に新たに付与された創作的部分には著作権が生じる。
  • 仮に原著作物の著作権を侵害している二次的著作物であっても、著作権が成立する部分については著作権行使ができる。
  • 本件のマンガは、権利行使ができないほどの甚だしいわいせつ文書とはいえない。

裁判所は原告のマンガをきちんと読んだ上で、オリジナリティやわいせつ性についての検討・評価をしていると思われます。二次創作物だからといって、著作権が認められないわけでも、権利行使ができないわけでもないということですね。