1 侵害検討の流れ
特許侵害が疑われる製品やサービスが発見された場合、以下のような流れで検討します。
(1)被疑侵害製品(方法)の特定
(2)特許請求の範囲の分説
(3)被疑侵害製品(方法)の構成の分説
(4)文言侵害の検討(クレーム解釈、対比)
(5)均等侵害の検討
その1 第1要件
その2 第2~第4要件
その3 第5要件
(6)無効理由の存否の検討
今回は、「(1)被疑侵害製品の特定」について説明します。
2 被疑侵害製品の特定
1.特定の必要性
行使する特許権が物の発明である場合には、特許を侵害していると思われる物を特定する必要があります。また、方法の発明やまたは物の生産方法の発明である場合には、相手方の実施している方法そのものが特定される必要があります。
なぜなら、特許権が侵害されているか否かの判定は、特許を侵害していると思われる物や方法(以下「被疑侵害製品」といいます。)の構造等が、特許請求の範囲に記載された構成を満たしているかどうかを検討することによって行われるからです。
また、被疑侵害製品の特定は、特許侵害訴訟を提起したとき、裁判所が審理する対象を決定し、また判決の効力がどこまで及ぶのかを画するのに必要となります。
さらに、被疑侵害製品の特定は、勝訴判決を得たあとに相手方の製造販売行為を差し止める場合、執行の段階でも重要です。判決を執行する段階になって、執行裁判所が、判決主文をみてどの製品の製造販売を差し止めるべきかの判断ができず、結局差し止められないという事態を避けるためにも、製造販売差し止めの対象を明確にしておかなければならないのです。
2.特定の方法
まず、訴訟の審理対象や執行すべき対象を決定するために必要とされる被疑侵害製品の特定方法については、現在の実務の運用では、行使する特許権が物の発明である場合、被疑侵害製品の製品名、製造番号、製造型式があれば、それをもって特定できたものとの扱いがなされています。
行使する特許権が方法の発明である場合には、相手方が使っている方法を、工程表や説明文などを用いるなどして具体的に記述して特定することになります。
次に、被疑侵害製品が特許請求の範囲を充足しているか否かを判断するために必要とされる被疑侵害製品の特定方法については、被疑侵害製品の具体的な構造・方法等を、図面や文章を用いて記述する方法で特定します。
この特定方法の記述の仕方については、実務上、特許請求の範囲を「構成要件」という単位にわけ、この記載に準じた形で、被疑侵害製品の具体的な構造・方法等を記述するという方法がとられています。
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