1 音商標の登録について
平成26年度商標法改正によって、新しいタイプの商標が登録できるようになりました。
現在、日本の商標法の下では、次の9つの類型の商標が認められています。
- 文字商標
- 図形商標
- 記号商標
- 立体商標
- 動き商標
- ホログラム商標
- 色彩のみからなる商標
- 音商標
- 位置商標
(このほか、1から4まで及び7を結合させた結合商標も認められています。)。
よって、音商標も他の登録要件を充足すれば、商標登録可能となりました。
それでは、石焼き芋やさんは、あの独特な石焼き芋の売り声を登録できるでしょうか。
2 慣用商標の商標登録
2.1 商標の不登録事由
商標法は、一般的に商標登録を受けることができない類型を列挙し、これにあたらないものを原則として商標登録するものと定めています。
この類型の一つに、「慣用されている商標」(商標法3条1項2号)があります。
自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二 その商品又は役務について慣用されている商標
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標(e-Gov法令検索)
2.2 「慣用されている商標」とは
「慣用されている商標」とは、同業者間において一般的に使用されるに至った結果、いかなる者にかかる商品又は役務であるかを識別することができなくなった商標をいいます。
このような商標が登録できないのは、既に出所表示機能が十分に発揮できなくなっていると考えられるためです。
出所表示機能とは、同一の商標が使用されている場合に、その商品又は役務(サービスとも言い換えられます。)の出所(メーカーやサービス提供者等)が同一であることを示す機能をいいます。このような機能を有さない商標には、登録商標としての独占権を与えるべきではありません。
2.3 慣用されている商標の具体例
商標登録を受けられる標章には、文字や図形のほか、色彩や音等も含まれますが、慣用されている商標の具体例として、それらのうち以下のようなものが挙げられています。(商標審査基準 改定第13版第30頁参照)。
(文字や図形等からなる商標)
・商品「清酒」について、商標「正宗」
・商品「カステラ」について、商標「オランダ船の図形」
・役務「宿泊施設の提供」について、商標「観光ホテル」
(色彩のみからなる商標)
・役務「婚礼の執行」について、商標「赤色及び白色の組み合わせの色彩」
(音商標)
・商品「焼き芋」について、商標「石焼き芋の売り声」
・役務「屋台における中華そばの提供」について、商標「夜鳴きそばのチャルメラの音」
商標審査基準
なお、上記のとおり、慣用されている商標であるかは、商品及び役務との関係で決まります。この点は参考記事の「普通名称のみを表示する商標」と同様です。例えば、商標「シュガー」は商品「砂糖」との関係では普通名称にあたりますが、商品「被服」との関係では普通名称にはあたりません。
3 普通名称のみを表示する商標との関係
商標登録を受けることのできない類型の一つに、「普通名称のみを表示する商標」があります(商標法3条1項1号)。普通名称とは、取引業界においてその商品又は役務の一般的名称であると認識されるに至ったものを指すため、本類型にあたるものか、「普通名称のみを表示する商標」にあたるものか、判別しがたいものとあるものと考えられます。
しかし、類型の態様上、いずれにあたるものであるかの差はあまり大きくないものと考えられます。
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