ポイント

意匠法が改正され、個人輸入に対する規制が強化されることになりました。

海外にいる者(海外のEC事業者等)が、国内の購入者に、意匠権を侵害するような物品(模倣品など)を国内に持ち込ませる行為が、意匠権を侵害することになりました。

よって、そのような場合には、意匠権者は、模倣品の輸入を差し止めることができるようになりました。なお、購入者が意匠権を侵害するわけではありませんが、結果的には購入したはずの模倣品を入手できなくなります。

模倣品の個人輸入の問題点

意匠権とは、物の形状等について、一定の要件を具備している場合に意匠権を認め、意匠の実施を独占させる法律です。製品のデザインについて意匠権が登録されれば、他人は勝手にその登録意匠や、これに類似する意匠の実施ができなくなります。

意匠法

第二十三条 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

意匠の実施とは、意匠に係る物品の製造、使用、譲渡等をいいます。よって、意匠権が登録されれば、他人は「業として」登録意匠及びこれに類似する意匠に係る物品の製造、使用、販売、輸出入などができなくなります。

しかし、意匠法は日本国内における登録意匠の実施に関する法律ですので、海外における意匠の実施行為には日本の意匠権は及びません。これは、日本で意匠権を取得したデザインの製品であっても、海外で同様の権利を取得していない限り、海外における製造、販売等を取り締まることができないことを意味します。

また、意匠権者は「業として」意匠の実施をする権利を専有しますので、業としてではなく意匠の実施行為をする限りは、意匠権を侵害しません

よって、日本国内で譲渡されれば意匠権を侵害するような模倣品であっても、海外通販で購入して、販売目的等の「業として」ではなく、個人的な使用を目的に輸入する場合には、模倣製品を国内に輸入しているにもかかわらず、登録意匠の実施にあたらず、輸入差止めができないことがありました。

意匠法改正

そこで、意匠法が改正され、個人輸入に対する取締りが強化されることになりました。改正意匠法は令和3年5月21日に交付され、その日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日に施行されます。

改正意匠法は、実施概念を次のように改正しています(変更部分に下線)。

改正意匠法

第二条(略)

 この法律で意匠について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

一 意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為

この改正によって、海外の事業者が、個人輸入者をして、意匠権を侵害するような物品を日本国内に持ち込ませる行為が、意匠権侵害となります。

どのような行為が意匠権を侵害するのか

改正意匠法の改正部分の輸入行為の行為主体は、「外国にある者」ですので、個人輸入者ではなく、海外のEC事業者等です。

海外のEC事業者等が、個人輸入者をして、国内に登録意匠又はその類似意匠にかかる物品、すなわち、模倣品を国内に持ち込ませる行為が意匠権を侵害します。

意匠権者は、当該行為、すなわち輸入行為を差し止めることが可能となりました。

個人輸入者でトラブルに巻き込まれる?

模倣品を個人輸入する購入者は意匠権を侵害するわけではありませんが、模倣品の輸入が差し止められる結果、購入者は購入したはずの模倣品を手に入れることができなくなります。購入者は模倣品を販売した海外事業者に返金を要求することになるでしょうが、海外事業者に返金を強制するのは難しいことも予想されます。

すなわち、模倣品の購入者は、個人輸入者といえどもトラブルに巻き込まれることになりかねません

なお、個人輸入であっても、日本国内で販売すれば意匠権を侵害するような模倣品を輸入して、日本国内で販売した場合には「業として」の実施として意匠権を侵害します。その場合、民事的な制裁と、刑事罰の対象となりますので、そのような行為は厳に慎むべきなのはいうまでもありません。

商標権に関しても同様の改正がされていますので、次の記事をご覧下さい。