映画の盗撮はなぜ違法?著作権法の私的複製と映画盗撮防止法の関係

映画の盗撮は違法

映画の盗撮は違法行為

映画の盗撮は違法行為です。映画本編の上映前には、映画泥棒(カメラ男)が官憲に捕まっていますよね。

また、スマホで映画を録画して書類送検された方もいるようです。

千葉県警千葉中央署は26日、千葉市中央区の映画館で昨年12月、株式会社アニプレックスが著作権を持つ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」をスマートフォンで録画し、著作権を侵害したとして、著作権法違反と映画盗撮防止法違反の疑いで、千葉市中央区の自称会社員の男性(53)を書類送検した。同作品の盗撮による立件は全国初。劇場版『鬼滅の刃』を盗撮、全国初の立件 自称会社員を書類送検 – 産経ニュース

でも、映画の盗撮といえども、著作権法上の例外である私的複製にはあたらないのでしょうか?

今回は、映画の盗撮について取り上げました。

私的複製と盗撮防止法

映画の盗撮は、原則的には複製権侵害

まず、著作物を著作権者の許諾なく複製すると、複製権(著作権法21条)の侵害となります。映画も著作物ですので、これを勝手に撮影すると、原則的には複製権を侵害します。また、撮影した動画をネットにアップロードすると公衆送信権(23条)の侵害となります。

例外としての私的複製

ただし、著作権法には著作権を制限する例外規定があり、一定の要件を充足している場合には、著作権者の許諾を受けることなく著作物を利用することが可能です。

その例外の一つに「私的複製」があります。著作物を、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、著作権者の許諾がなくとも複製可能です(30条1項柱書)。

例外の例外としての映画盗撮防止法

しかし、いかなる場合でも「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的として複製」していれば自由な複製が可能かといえば、そんなことはありません。すなわち、私的複製にはいくつかの例外があります。

例えば、ネットに違法アップロードされているような動画をダウンロードする行為は、個人的に行う限りは私的複製に該当しそうですが、著作権法で私的複製から除外されています(30条1項3号)。また、動画等に施されている技術的保護手段を故意に回避して動画を複製するような場合も、私的複製とはなりません(同2号)。よって、これらの行為は、個人的・家庭内で行われていたとしても、複製権を侵害することになります。

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このような例外と同様に、映画の盗撮も「映画の盗撮の防止に関する法律」(映画盗撮防止法)で、私的複製の規定が適用されないことになっています(映画盗撮防止法4条1項)。

ただし、最初の有料上映の日から8か月経過後は映画盗撮防止法の規定は適用されません(4条2項)。

なお、8か月経過後は私的複製の除外規定が適用されなくなるだけであって、映画の盗撮が適法になるわけではありません。海賊盤作成のために映画を盗撮するような行為は、そもそも私的複製にはあたりませんので、いつでも(8か月経過後でも)複製権侵害となります。

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映画盗撮防止法
第四条 映画の盗撮については、著作権法第三十条第一項の規定は、適用せず、映画の盗撮を行った者に対する同法第百十九条第一項の規定の適用については、同項中「第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項」とあるのは、「第百十三条第二項」とする。
2 前項の規定は、最初に日本国内の映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われた日から起算して八月を経過した映画に係る映画の盗撮については、適用しない。

そもそも映画の盗撮とは

映画盗撮防止法の「映画の盗撮」とは、映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画(そのような映画の先行試写会であれば、無料であってもこれに含まれます)を、著作権者に無断で録画又は録音することをいいます。録画はもちろん、録音だけでも盗撮になりますが、静止画の撮影は盗撮にはなりません(だからといって撮影しても良いわけではありません。念のため)。

映画を盗撮するとどうなるか

映画を盗撮して、私的複製の規定の適用が場合には、著作権法の複製権侵害となります。そのような盗撮行為は、民事上の差止請求(著作権法112条1項)や、損害賠償請求(民法709条)の対象になります。

また、故意に複製権を侵害すると刑事罰の対象になります。これは原則的には親告罪ですので、告訴が無い限り公訴提起されません。しかし、次の2つの要件を充たす盗撮行為は非親告罪であり、告訴が無くとも公訴提起されます(著作権法123条2項、3項)。

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著作権法
第百二十三条 第百十九条第一項から第三項まで、第百二十条の二第三号から第六号まで、第百二十一条の二及び前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の規定は、次に掲げる行為の対価として財産上の利益を受ける目的又は有償著作物等の提供若しくは提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的で、次の各号のいずれかに掲げる行為を行うことにより犯した第百十九条第一項の罪については、適用しない。
一 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。次号において同じ。)を行うこと(当該有償著作物等の種類及び用途、当該譲渡の部数、当該譲渡又は公衆送信の態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。
二 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信を行うために、当該有償著作物等を複製すること(当該有償著作物等の種類及び用途、当該複製の部数及び態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。
3 前項に規定する有償著作物等とは、著作物又は実演等(著作権、出版権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権、出版権又は著作隣接権を侵害するもの(国外で行われた提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきもの)を除く。)をいう。
非親告罪となる条件
  • 対価として財産上の利益を受ける目的または著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的があること
  • 原作のままの映画の複製物を公衆に譲渡し 又は原作のままの映画の公衆送信を行うために、映画を盗撮すること

映画の盗撮の刑事罰は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれらの併科となっています(著作権法119条1項)。

なお、撮影時には私的複製であったとしても(例えば初有償上映から8か月経過後の私的複製)、撮影した動画をネット等にアップロードするような行為は公衆送信権侵害となります。そもそも私的複製目的の録音、録画、撮影であっても映画館では禁止されていますので、やっていいわけではありません。

映画の盗撮は違法行為

このように、映画の盗撮は違法行為です。軽い気持ちでスマホで撮影したり、録音したりすると重大な結果を招きますので、くれぐれもご注意下さい。