京アニ事件の虚偽情報を投稿したまとめサイト運営の法的責任について

まとめサイトの法的責任

まとめサイトとは

特定のテーマに関し、掲示板やツイッター等に散在する情報をまとめた上で発信する「まとめサイト」が数多く運営されています。

まとめサイトについては様々な問題が提起されています。例えば、虚偽情報が多かったり、コピペ・著作権侵害が横行しているというような主張が散見されます。

他方で、まとめサイトは単なるプラットフォームに過ぎず、情報をまとめただけであるから、その発信内容には責任を負わないとする主張もみられます。

それでは、掲示板やツイッターに投稿された名誉毀損的な情報をまとめた記事を作成し、投稿したまとめサイトの運営者には、どのような法的責任が生じ得るでしょうか。

今回は、まとめサイト運営者の法的責任について判断した裁判例をご紹介します。

事案の概要

先日、京都アニメーションの放火殺人事件をめぐり、まとめサイト運営者(以下、「運営者」といいます。)に約360万円の損害賠償を命ずる判決がありました。

運営者はインターネットの掲示板(5ちゃんねる)に投稿された情報を編集して、放送事業者であるNHKとその記者Xが放火殺人事件に関与したかのような記事を自身のまとめサイト(以下、「本件まとめサイト」といいます。)に投稿し、これを引用する記事をツイッターにも投稿していました。

投稿には次のような表現が含まれていました。

  • NHKのXはなぜ放火犯の遺留品を回収したのか
  • なんで警察来る前に勝手に回収してんだよ
  • 警察よりも早く、事件の犯人の遺留品を回収するNHK取材クルー
  • NHKなんで隠したん?
  • NHKの依頼殺人じゃね?
  • 隠蔽すりゃ疑われるわな
  • NHK共犯説唱えられても仕方ないぞ

大地判令和元年12月3日・令和1(ワ)7518

情報開示請求事件
(大地判令和元年12月3日・ 令和1(ワ)7518)

まず原告は、運営者を特定するために、本件まとめサイトのサーバーを設置するインターネットプロバイダーに対し、発信者情報開示請求を行いました。

裁判所は運営者の投稿内容は原告の名誉・信用を侵害するものであると認定した上で、これが掲示板の情報を再編集したものであるとしても、運営者の損害賠償義務は免れないと判断しています。

そして裁判所は、原告に対し運営者の情報を開示するよう、インターネットプロバイダーに命じました。

本件投稿の大部分は元サイトに掲載された投稿であり、本件投稿の発信者が自ら一次的に行った表現行為ではないが、本件投稿の発信者は、自ら新たにタイトルを付し添付する画像を選択し、元サイトに掲載された多数の投稿の中から本件投稿に掲載するものを選択、編集しており、その結果として、本件投稿は、その全体として、閲覧者に対して上記のような印象を与えるものとなっているのであるから、発信者は、本件投稿が元サイトに掲載された投稿を再編集したものであることを理由に、本件投稿による原告の損害の賠償義務を免れるものではないというべきである。大地判令和元年12月3日・令和1(ワ)7518

損害賠償等請求事件
(東地判令和3年3月16日・令和2(ワ)1522)

原告は、運営者の本件まとめサイトへの投稿と、これを紹介するツイートによって原告の名誉が毀損されたと主張し、運営者に対し、損害賠償及び謝罪文書の交付を求める訴訟を提起しました。

投稿・ツイートは原告の社会的信用を低下させたか

裁判所は「一般の閲覧が可能なインターネット上の記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきである」と一般論を述べ、次のとおり、運営者の投稿が原告の社会的信用を低下させるものであると認定しました。

また、ツイートについても同様に原告の社会的信用を低下させるものであると認定しています。

かかる本件記事の内容について、一般の閲覧者の普通の注意と読み方をした場合、原告が本件放火事件に関与しており、その関与を隠蔽するために、原告の職員である甲が、本件放火事件の犯人の遺留品を警察に先んじて無断で回収し、しかもその際に指紋が残らないように軍手を用いたとの事実を摘示するものと解されるから、本件記事は、原告及び甲が、殺人罪、現住建造物放火罪に該当する重大犯罪が疑われる本件放火事件に関与した上に、それに関する証拠隠滅行為に及んだとの印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。東地判令和3年3月16日・令和2(ワ)1522

投稿・ツイートは転載したものにすぎないか

被告は、これらの投稿等は、もとの掲示板の投稿を転載したものにすぎないとして、新たに原告の社会的評価を低下させるものではない旨を主張しています。この点について裁判所は、運営者は元サイトの情報を編集して本件まとめサイトに投稿しているため、元サイトの転載にとどまるものとはいえず、原告の社会的信用を「新たに」低下させるものであると認定しました。

独自のタイトルを上記のとおり付した上で、上記のとおり、元サイトの一部の記事を取捨選択し、本件放火事件に対する原告の関与を疑う趣旨のコメントを、その議論がつながっているかのような順番に並べて編集するとともに、人物が何かを拾い集めているように見える画像を「警察よりも早く、事件の犯人の遺留品を回収するNHK取材クルー」との文言とともに掲載したものであることが認められるから、本件記事は元サイトの転載にとどまるものとはいえない(被告は、同画像及びこれに付された文言は第三者のブログからの転載の転載にすぎないとも主張するところ、このことはむしろ、元サイトでは同画像等へのハイパーリンクが設定された文字列が表示されているにすぎなかったのに対し、被告において本件記事の本文中に直接同画像等を掲載することによって、原告及び甲が本件放火事件に関与しているとの印象を強める編集を行ったものといえる。)東地判令和3年3月16日・令和2(ワ)1522

免責事項の効果

運営者は、サイト上に次のような免責事項を記載していました。

<本件まとめサイト> の記事については、すべて編集責任者が執筆・チェックした上で投稿をしています。

ただし、あくまで記事内容は一つの見解であり、その内容の正誤についての保証はいたしかねます。また、本情報に基づいた結果被った被害などについて、弊社は一切責任を負わないこととします。東地判令和3年3月16日・令和2(ワ)1522

しかし、裁判所はこのような記載が不法行為の成立を妨げるものではないと一蹴しています。

謝罪文書交付が必要か

原告は運営者に対し、謝罪文書交付も求めていましたが、運営者が本件記事等を削除したこと、謝罪記事を本件まとめサイトで公表していることを考慮し、裁判所は謝罪文書交付の命令は認めませんでした。

原告の損害額

裁判所は、高い信頼性と中立性が要求される原告NHKの立場や、閲覧回数が6万2068回であったことを原告に有利な事情として考慮し、他方で、外観上本件まとめサイトにおける情報の信頼性が高いとまではいえないこと、運営者が5ヵ月後には投稿を削除し、謝罪記事を公表したことも考慮し、投稿による原告の無形損害は250万円としました。

また、裁判所はツイートについて、リツイートによって無制限に伝播する危険性があることを考慮し、他方で、運営者のフォロワー数が6336人であり閲覧者が投稿よりは多くないことが推測されること、運営者が本件記事とともにツイートも削除したことも考慮し、原告の無形損害を50万円としました。

裁判所は上記300万円に、弁護士費用30万円、発信者情報開示請求の費用31万8880円(実費1万9510円、弁護士費用29万9370円)を加えた、合計361万8880円を原告の損害と認定しています。

なお、裁判実務において、不法行為に基づく損害賠償請求における弁護士費用相当額は、なぜか損害の10%とされており、本判決でもこれが踏襲されています。また、本件では発信者情報開示請求の弁護士費用は全額回収できたようです。

まとめサイト運営者の法的責任

まとめサイトは一定のストーリーに基づいて元の投稿を編集して「まとめる」ものです。本判決のように、掲示板への書き込みをまとめた投稿であっても、そのような編集を経た投稿が、誰かの社会的信用を「新たに」低下させるものである場合には、損害賠償責任等を負うことがあります。

なお、社会的信用が低下したとされる被害者の無形損害については、裁判所も特に金額の根拠を示すことはありません。また、相場的なものが形成されているわけでもありませんので、事前に損害額を見積もるのは困難です。

本記事でご紹介した上記裁判例は、誹謗中傷文言を含む元の記事をそのまま転載した場合や、引用した場合についての判断をしたわけではありません。

この点については、元のツイートをそのままリツイートするような場合であっても、名誉毀損による不法行為責任を負うというような裁判例があることから(大高判令和2年6月23日・ 令和1(ネ)2126)編集を加えていないからといって名誉毀損とならないわけでもないと思われます。

インターネットは誰もが閲覧できますので、名誉毀損的な表現は、引用であれ転載であれ、厳に慎むべきといえるでしょう。