団体商標とは

商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有します(商標法25条)

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商標法
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

ところが、商標権者が専有するのは「指定商品又は指定役務について」登録商標の使用をする権利です。業界団体等が商標を取得して団体の構成員に使用させる場合には、その業界団体自身は必ずしも商標を指定商品等に使用するわけではありません。

商標法は自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標について、商標登録をできると定めています。しかし、団体自身が使用をする場合でなくとも、団体が商標権を取得して構成員に使用させることができれば便利です。

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商標法
第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

(2項以下略)

そこで、商標法は、一定の団体等が構成員に使用させる商標について、団体商標の商標登録ができる旨、規定しています。

商標法
第七条 一般社団法人その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。)若しくは事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く。)又はこれらに相当する外国の法人は、その構成員に使用をさせる商標について、団体商標の商標登録を受けることができる。
2 前項の場合における第三条第一項の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。
3 第一項の規定により団体商標の商標登録を受けようとする者は、第五条第一項の商標登録出願において、商標登録出願人が第一項に規定する法人であることを証明する書面を特許庁長官に提出しなければならない。

例えば、ある業界団体が、加盟者が特定の規格に準拠している場合に、規格に準拠している旨を認定して、認定済みを表すマークを付与するとします。そのような認証・証明マークが団体に加入していない者や、規格に準拠していない者に使用されてしまっては、認証・証明マーク付与の意味がありません。そのような場合に、業界団体が団体商標として商標権を取得し、加入者の一定要件を充たす者に登録商標の使用許諾契約を締結し、使用許可を与えるといった運用が考えられます。

団体商標の例

団体商標の例としては、次のようなものが挙げられます。

商標登録第6305813号
権利者:公益社団法人全日本不動産協会
商品・役務区分:36
商標登録第6312130号
権利者:一般社団法人全国食品リサイクル連合会
商品・役務区分:40
商標登録第4193150号
権利者:一般社団法人音楽電子事業協会
商品・役務区分:9

団体商標登録の要件

団体商標といえども、登録には通常の商標の登録要件の多くを充足させる必要があります。

団体商標と通常の商標の登録要件は次の要件が異なります。

団体商標の主体

団体商標は、一定の団体にしか認められず、株式会社や財団法人などには認められません。また、フランチャイズチェーンにも構成員が加入していますが、フランチャイザーとフランチャイジーとの間の事業契約により成立するものですから、団体と構成員との関係にはありませんので、団体商標の主体にはなりません。

団体商標が認められる団体の例は次のとおりです。

団体商標が認められる団体
  • 公益社団法人
  • 一般社団法人
  • 事業協同組合
  • 農業協同組合
  • 商工会議所
  • 商工会
  • NPO法人

団体商標が認められない団体の例は次のとおりです。

団体商標が認められない団体
  • 株式会社
  • 合同会社
  • 財団法人
  • フランチャイズチェーン
  • 町内会
  • 法人格のない団体

団体商標を使用する者

団体商標は、団体の構成員に使用させるものである必要があります(7条1項)。団体自体の商品・役務に使用する商標でなくても、構成員が使用する商標であれば商標登録を受けることが可能です(商標法7条2項、3条1項)。

なお、出願時に、出願人が社団法人または組合であることを証明する書面を提出する必要があります(商標法第7条第3項)。

団体商標を使用するには

通常の商標を使用するには、商標権者から個別の使用許諾を受ける必要があります。

しかし、団体商標のは団体構成員の総意に基づき団体構成員に使用させるために登録されるものですから、団体構成員は個別の契約をしなくとも、当該団体の定めるところより団体商標に係る登録商標を使用できます

団体は構成員に団体商標を使用させる条件をあらかじめ決めておくことができます。例えば団体への加入のみで使用ができるようにしたり、団体の定める基準(たとえば技術規格への適合)を条件に団体商標の使用ができるよう、定めることが可能です。

しかし、団体構成員は団体商標権の侵害者に対し差止請求、損害賠償等をすることはできず、これらの請求は団体自体が行う必要があります。

なお、団体構成員の登録団体商標の使用権は移転や一般承継をすることができません。そのような使用権は、団体構成員の地位によって生じているものだからです。

団体商標の意義

日本の商標法は登録時に商標の使用を要件としていません(登録主義)。また、使用していない登録商標は不使用取消審判の対象になりますが、この「使用」は商標権者ではなく、使用権者でもよいとされています。そうすると、法人格のある団体が商標登録をして、登録商標を団体構成員等に使用許諾することにより、団体商標と同様の目的は達成できます。現実に平成8年の法改正により団体商標制度として復活するまで、使用許諾制度の活用によって同目的が実質的に達成できるとして、大正10年法の旧「団体標章」制度は廃止されていました。

よって、団体商標の存在意義は、個別に使用許諾をせずともよいことと、団体商標を認めている諸外国との国際的調和を図れる、という点にあるといえます。