【概要】ウェブサービスによる写真トリミングは同一性保持権の侵害となるか?

ツイッターで写真をツイート・リツイートとすると仕様に従い自動的にトリミングされます。このトリミングについて、写真の著作者の同一性保持権を侵害する旨の判断が知財高裁でなされたことは記憶に新しいです(リツイート事件控訴審)。この事件は最高裁に係属しましたが、リツイート時の同一性保持権侵害については最高裁は判断しませんでした。

さらに最近(令和3年5月31日)知財高裁は、リツイート事件控訴審と同様の枠組みで、ツイート時にプロフィールに設定した写真が円形に切り抜かれることをもって、写真の著作者の同一性保持権を侵害する旨の判断を示しました。

例えシステムで自動的にトリミングされる場合であっても、他人の著作物である写真等をアカウントのプロフィールに表示してツイートすると、写真等の著作者の同一性保持権を侵害する可能性が高いです。

詳細は次のとおりです。

同一性保持権とは

著作者は、著作物について自身の意に反して変更、切除その他の改変を禁止する権利を有します(著作権法20条)。これは著作者人格権のひとつであり、同一性保持権といわれています。

著作権法
第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

同一性保持権は著作者人格権のひとつですので、著作者の一身に専属します。たとえ著作物の著作財産権を譲渡した場合にも、同一性保持権は譲渡されず著作者に留保されます。

著作権法
第五十九条 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。

ウェブサービスによる写真のトリミングは同一性保持権侵害か

ツイッターのようなウェブサービスでは、アップロードされた写真が仕様に応じて改変されることがあります。

例えば、ツイート・リツイートの際に表示される写真の縦横の比(アスペクト比)は決まっていますので、元の写真と仕様のアスペクト比が違う場合にはトリミングされた上で表示されることになります。また、写真をツイッター等のプロフィールに使う場合には、円形にトリミングされます。

写真データがサーバーに蔵置されている時やサーバから送出される時は(データサイズの縮小こそありますが)基本的には元データとアスペクト比は変わりません。HTMLとCSSで画像の一部を不可視にするなどして、表示の態様を変えることが広く行われています。

写真がウェブサービスでトリミング処理されるとはいっても、サーバは元のアスペクト比の写真データと同時に、ウェブページのHTMLやCSSといったデータを送出するのみです。写真のトリミングを含むウェブページの表示処理(レンダリング)は、ユーザが閲覧に使用するブラウザがデータを解釈して画面を構成して行います。

そうすると、写真をトリミングしたのは誰になるのでしょうか?ツイッター社?元の写真のアップロード者?リツイート者?閲覧者?

それぞれの行為をまとめると次のとおりとなります。

アカウント開設者、元ツイート者

他人の著作物である写真をアップロードした時点で、複製権、自動公衆送信(可能化)権の侵害となるでしょう。

また、写真をツイートすることによって(ツイッターの仕様によるものとはいえ)ツイートに伴うトリミングを施しているともいえます。

ツイッター社

写真をトリミングするような態様で閲覧者のコンピュータ画面に表示させるようなコード(HTML、CSS)を送出しています。

ツイート、リツイートによる写真のトリミングはツイッターの仕様によるもので、普通にツイートする限りツイート者にとってトリミングはほぼ不可避です。

リツイート者

元ツイートをリツイートすることによって、トリミング表示がされる写真をタイムラインに表示させています。

閲覧者

ツイッター社から送出されてきたデータ(写真データ自体はトリミングされていない)をコンピュータ・スマホ等のブラウザでレンダンリングして、トリミングされている態様で画面に表示させています。

リツイートでトリミングをした者は誰か?

上記のいずれも写真のトリミングには関与しているといえますが、著作権侵害主体は、やはり他人の著作物を無断で使用したツイート・リツイート者とするのが素直なように思います。

リツイート事件控訴審は、画像自体は改変されていないが、ツイート・リツイートによってHTMLやCSSによって位置、大きさが指定されたためにトリミングされたといえるから、トリミングの主体はツイート者・リツイート者であると判断しています。

判決抜粋をみる

前記(1)のとおり、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は、流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は、表示するに際して、本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により、位置や大きさなどが指定されたために、上記のとおり画像が異なっているものであり、流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えられているものではない。

 しかし、表示される画像は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものとして、著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるところ、上記のとおり、表示するに際して、HTML プログラムやCSS プログラム等により、位置や大きさなどを指定されたために、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められるから、本件リツイート者らによって改変されたもので、同一性保持権が侵害されているということができる。知高判平成30年4月25日・平成28(ネ)10101(リツイート事件控訴審)

円形のプロフィール写真も改変にあたる

リツイート事件控訴審の判断を敷衍すれば、ウェブサービスを利用して自動的に画像が改変されるような場合は、ウェブサービスの提供者や閲覧者ではなく、アカウントの利用者が改変主体となります。

ツイッターのプロフィール写真は丸くトリミングされますが、これについても裁判所はリツイート事件と同様の枠組みで同一性保持権の侵害を認めています。

本件写真1又は2は上記ア(ア)のとおり正方形又は長方形の写真であったところ、ユーザが本件アカウント1又は6のタイムラインあるいはツイート1又は6若しくは6’に係るウェブページを閲覧する際には、それらの一部のみが、クライアントコンピュータにおいて、円形の写真として表示されているといえるのであり、本件円形表示は本件写真1及び2を著作者の意に反して改変するものと評価することができる。(略)

本件円形表示がされた際、画像データそれ自体の改変はされていないものの、ユーザが視覚的に認識することができる、クライアントコンピュータに表示される画像の形状等が変更されているのであり、このような表示の変更がされることは著作権法20条1項所定の「改変」と評価することができる。
知高判令和3年5月31日・令和2(ネ)10010

著作権を侵害する情報を発信したのはいつか

上記判決は、ツイートによる著作権侵害について、プロバイダ責任法に基づいてツイート者のログイン情報(IPアドレス)の開示を求めた事案に対するものです。

IPアドレス等のアクセス情報は膨大になりますので、一定期間経過後に廃棄されます。よって、ツイートが過去に行われているとIPアドレス等の情報が保存されていない場合がありますので、いつの時点でのログイン情報を開示させるのか、換言すれば、著作権侵害情報を発信したのがいつなのかが重要な問題となります。

前記判決では、著作権侵害となる過去のツイート行為によって、最新のログイン情報を開示させることはできないと判断しています。開示請求者は、アカウント管理者が著作権侵害となるツイートを削除しない不作為による権利侵害をしており、また、最新ログインをしたアカウント利用者が侵害情報の発信者である旨を主張しましたが、最新ログインをしたアカウント利用者はプロバイダ責任法における「発信者」ではないとして、認められませんでした。

しかし、プロフィール写真であればツイートごとに表示されます。上記判決は、プロフィール写真を用いたツイート行為によって侵害情報をサーバに記録したと認定し、プロフィール写真を用いたツイート時の発信者情報の開示請求を認めました。

ウェブサービスの仕様だとしても、利用者が侵害者となる

上記の2つの裁判例は、ウェブサービスの仕様に基づいて写真の表示態様が変更されるような場合であっても、元の写真の著作者の同一性保持権を侵害すると判断しています。

ウェブサービスで仕様による自動的な写真の改変がなされる場合、これを回避するのはなかなか難しいです。そもそも他人の著作物である写真をアップロードした時点で複製権や自動公衆送信可能化権を侵害していますので、無断使用は厳に慎むべきでしょう。