コンピュータプログラムの重要な役割

コンピュータプログラム(ソフトウェア、アプリケーション)は私たちの生活に欠かせません。現代社会では、スマホ、PC、家電などほとんど全ての電化製品の動作にコンピュータプログラムが必要といっても過言ではありません。

それでは、特許法において、コンピュータプログラムはどのように保護されるでしょうか。

今回は、コンピュータプログラムの特許法上の保護について取り上げました。

プログラム発明の特許法上の位置づけ

特許法上の発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいいます(特許法2条1項)。

特許法において、発明は次の三種類にカテゴライズされています。

発明の種類
  • 物の発明
  • 方法の発明
  • 物を生産する方法の発明

すなわち、発明は「技術的思想」という抽象的なものではありますが、これを物、方法、生産方法といったかたちである程度具現化したものが、特許法上の保護の対象となります。

プログラムは本来は形を持たない無体物です。よって、まずプログラムは単なるコンピュータを動かす手順、すなわち、方法の発明として捉えることが可能です。

また、平成14年の特許法改正により、特許法の「物の発明」の定義にプログラムの発明が含まれることになりました。よって、今日では、プログラムの発明は「物の発明」にもあたることが明らかになっています。

さらに、プログラムをハードウェアに組み込むと(例えば、プログラムをコンピュータにインストールすると)、ある処理をする装置として捉えることができますので、プログラム発明を物(装置)の発明として捉えることも可能です。

例えば、コンピュータにAという処理をさせるプログラムがあるとします。このプログラムは、次のように、物(プログラム)の発明、物(装置)の発明、方法の発明として構成可能です。

  • 物(プログラム)の発明 コンピュータにAという処理をさせるプログラム
  • 物(装置)の発明 Aという処理をするコンピュータ
  • 方法の発明 Aという処理をする方法
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特許法
第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。
3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
4 この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

プログラム発明の実施

発明は、そのカテゴリーによって「発明の実施」とされる行為に違いがありますので、保護の効果が異なります。

物の発明であれば、発明の実施行為には次の行為が含まれます。物としてのプログラムの発明が特許されている場合には、次の行為が基本的には特許権を侵害する行為となります。

物の発明の実施行為
  • その物の生産
  • 使用
  • 譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。)
  • 輸出若しくは輸入
  • 譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。)

すなわち、プログラムが物の発明である場合、プログラムの生産、使用(コンピュータにインストールされたプログラムを実行する)、譲渡(プログラムの販売)、貸渡し(プログラムのレンタル)、ネットを通じた提供(ダウンロード販売)、輸出入、譲渡等の申し出(カタログに載せたり、ダウンロード販売のウェブページを公開すること)がプログラム発明の実施となります。よって、プログラム発明が特許されている場合には、特許発明の技術的範囲に属するプログラムについて、これらの行為をすると、特許権を侵害します。

一方、方法の発明であれば、「方法の使用」のみが実施行為になります。

方法の発明の実施行為
  • 方法の使用

よって、プログラムの発明が方法の発明として特許されていれば、発明の実施はコンピュータにインストレールしたプログラムを実行する行為であり、インストール行為や、プログラムの譲渡、貸渡し、ネットを通じた提供、これらの申し出、輸出入は発明の実施にあたりませんので、特許権侵害となりません。

また、コンピュータにインストールしたプログラムを使用するのは多くの場合エンドユーザであり、プログラムの提供元(販売事業者)ではありません。方法の発明としてのプログラムを個人が家庭内で使用する場合には「業としての実施」にあたらず、特許権侵害を問えない可能性が生じてしまいます。

このように、方法の発明は、明らかに物の発明よりも保護の範囲が狭くなってしまいます。

プログラム発明特許の間接侵害

発明のカテゴリーは、間接侵害の成否にも影響します。

特許法は、特許発明の内容全体の実施に至らない場合でも、特許権侵害を誘発する可能性が高い態様の行為を、間接侵害行為としています。間接侵害行為は直接的に特許権を侵害するものでなくとも、特許権を侵害したものとみなされます。なお、「みなす」とは、Aという事実のあるとき、元来性質の違うBという事実があるときと同一の効果を法律上認めることです。ここでは、間接侵害に該当する行為は本来は特許権を侵害する行為ではありませんが、特許権を侵害するという効果を法律上認めています。

特許が物の発明についてされている場合には、次の行為が特許権を侵害するとみなされます(間接侵害)。

物の発明の間接侵害行為
  • 業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
  • その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
  • その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為

一方で、方法の発明の場合には次の行為が特許権を侵害するとみなされます。

方法の発明の間接侵害行為
  • 業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
  • その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

例えば、プログラムが方法の発明として特許されている場合、プログラムのコンピュータへのインストール行為は「その方法の使用に用いる物」の生産行為です。しかし、これを個人のエンドユーザが行う場合、「業として」の生産にならないことがあります。

そして、パッケージプログラムは、プログラムを格納した媒体(CD-ROMなど)を販売する形で行われます。この媒体は、「その方法の使用に用いる物」(プログラムをインストールされたコンピュータ)の「生産行為に用いる物」ですので、媒体の譲渡等は間接侵害を構成しません(いわゆる間接侵害の間接侵害)。

このように、プログラムの発明を物の発明として捉えるか、方法の発明として捉えるかによって、保護の範囲が大きく異なってきます。

プログラム発明の保護

このように、コンピュータプログラム発明の保護にはいろいろな態様があり得ますが、物の発明としての保護が最も強力です。

なお、本稿では特許法における保護のみを取り上げましたが、コンピュータプログラムは著作権法や意匠法でも保護されることがあります。