知財FAQ

特許権、著作権、商標権、意匠権、不正競争-知的財産に関するよくある疑問を、弁護士が解消します

ノベルティグッズに商標をいれるとき、注意すべき点はありますか?

ノベルティグッズに商標をいれるとき、注意すべき点はありますか?
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社長
このたび、当社でノベルティグッズを作ることになりましてね。まだサンプルなんですが、ここに当社のブランド名を大きく入れるんですよ。
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弁護士
バッグに、御社の汗拭きシートのブランドロゴを印刷したのですね。素敵です。
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弁護士
あっ、でも、確か同じ名前のバッグのブランドがあったような??
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社長
もしかして、この商標は、バッグに使えないんですか?

ノベルティグッズと商標権

商品の販売促進のため、例えば一定額以上購入した顧客等に対して、ボールペンやキーホルダー、Tシャツ等のノベルティグッズが配布されることがあります。これらノベルティグッズには、商標である企業名やブランド名が付されることが多いです。

このようなノベルティグッズは、もともと企業が販売している商品のジャンルとはまったく関係ないジャンルの物品であることも少なくありません。この場合、企業としては商標をもともと想定していなかった形で使用することになりますので、商標法との関係で気をつけておくべき点があります。

ノベルティグッズの配布と商標権侵害

そもそも商標は、商品又は役務(サービス)を指定して登録されます。商標権の侵害も、この指定された商品(指定商品)や指定された役務(指定役務)と同一・類似の商品・役務について商標が使用された場合に、問題となってきます。

例えば、ボールペンを指定商品とする他人の登録商標「〇△×」を使用する場合、指定商品であるボールペンについての使用や、これと類似の商品となるシャープペンシルについての使用が商標権侵害にあたりますが、類似しない商品(例えば靴)についての使用は商標権侵害にはあたりません。

一方で、他人の登録商標と自社の商標が同一か類似である場合には、ノベルティグッズが他人の指定商品又は指定役務にあたるかこれと類似となってしまうと、標章を「使用」したとして他人の商標権を侵害してしまうように思えます。

このような標章の「使用」について、裁判例は、配布するノベルティグッズがあくまで広告媒体にあたるものであって、かつその広告で宣伝する商品が他人の登録商標の指定商品又はこれに類似する商品にあたらない場合、ノベルティグッズの配布について商標権侵害を否定しました(BOSS事件・大地判昭和62年8月26日)。

裁判例

BOSS事件・大地判昭和62年8月26日

この事件は、電子楽器等の製造・販売を業とする会社が、一定の顧客に対し、販売促進のため、自社製品に用いている「BOSS」のロゴマークを付したTシャツ、トレーナー及びジャンパーを製造・配布していたところ、指定商品を「被服、布製身回品、寝具類」とする商標「BOSS」について商標権を有している者が商標権侵害を理由に損害賠償を求めたというものでした。Tシャツ、トレーナー、及びジャンパーは上記の指定商品である「被服、布製身回品、寝具類」に属するものと考えられますから、これらTシャツ等の製造・配布は、他人の商標又はこれに類似する商標を商品に付した等として他人の商標を侵害したことになりそうです。

しかし、本判決は、上記Tシャツ等の配布は上記の指定商品についての使用ではないとして、商標権者側の請求を認めませんでした。

裁判所は、
「商標権者以外の者が正当な事由なくしてある物品に登録商標又は類似商標を使用している場合に、それが商標権の侵害行為となるか否かは、その物品が登録商標の指定商品と同一又は類似の商品であるか否かに関わり、もしその物品が登録商標の指定商品と同一又は類似ではない商品の包装物又は広告媒体等であるにすぎない場合には、商標権の侵害行為とはならない。そして、ある物品がそれ自体独立の商品であるかそれとも他の商品の包装物又は広告媒体等であるにすぎないか否かは、その物品がそれ自体交換価値を有し独立の商取引の目的物とされているものであるか否かによつて判定すべき」「被告は、前記のとおり、BOSS商標をその製造、販売する電子楽器の商標として使用しているものであり、前記BOSS商標を附したTシヤツ等は右楽器に比すれば格段に低価格のものを右楽器の宣伝広告及び販売促進用の物品(ノベルテイ)として被告の楽器購入者に限り一定の条件で無償配付をしているにすぎず、右Tシヤツ等それ自体を取引の目的としているものではないことが明らかである。また、前記認定の配付方法にかんがみれば、右Tシヤツ等はこれを入手する者が限定されており、将来市場で流通する蓋然性も認められない。そうだとすると、右Tシヤツ等は、それ自体が独立の商取引の目的物たる商品ではなく、商品たる電子楽器の単なる広告媒体にすぎないものと認めるのが相当」
としました。

この判決の要点は、次のとおりです。

  • 商標権者は指定商品について使用する権利を独占的に有し、その範囲で侵害者に対する請求ができる。しかし、あくまでも指定商品についての使用の独占的権利であって、包装物や広告媒体として用いる場合は含まれない(本件であれば、Tシャツ等を含む「被服、布製身回品、寝具類」について商標権を有していたとしても、商標権者はTシャツを指定商品とは別の商品の包装に使ったり、広告媒体として使ったりすることについての権利は独占的に有さないということです。このため、これを行う第三者に対して差止め等の請求はできないということになります。)
  • 包装物や広告媒体について登録商標と同一の商標やこれと類似の商標が付されていた場合、登録商標の指定商品と同一又は類似の商品についての包装物や広告媒体について付されているものでない限り、商標権侵害とはならない。
  • 商標が付されている物品が包装物や広告媒体であるか、又は指定商品の商品それ自体であるかは、その物品が「それ自体交換価値を有し独立の商取引の目的物とされているもの」であるか否かによって判断する。
  • 本件のTシャツ等は「それ自体交換価値を有し独立の商取引の目的物とされているもの」ではなく、電気楽器の広告媒体として「BOSS」のロゴが付されたものに過ぎない。
  • 電気楽器は指定商品「被服、布製身回品、寝具類」やこれに類似する商品にあたらないから、商標権侵害とはならない。

裁判例(BOSS事件)を踏まえた注意点

BOSS事件では、配布する物品が広告媒体等であるかの判断、すなわち「それ自体交換価値を有し独立の商取引の目的物とされているもの」であるかの判断にあたり、以下のような事情が挙げられました。

  • Tシャツ等が電子楽器より格段に低価格であること(配布する物品が、販売している商品より格段に低価格であること)
  • Tシャツ等は電子楽器の広告及び販売促進用の物品として配布されたものであること(=配布する物品が、販売している商品の広告及び販売促進用の物品として配布されたものであること)
  • Tシャツ等は電子楽器購入者に限り、一定の条件で無料配布されたものであること(=配布する物品が、一定の条件を満たした顧客に無料配布されたものであること)
  • Tシャツ等は入手する者が限定されているものであり、将来市場で流通する蓋然性もないこと(=配布する物品の入手者が限定されており、さらに将来市場で流通する蓋然性もないこと)

これらの事情はあくまでもこの裁判例において考慮された事情ですから、事案によっては他の事情が検討されることになります。また、上記事情のうちいずれかのみが重視されることもありえます。しかし、上記で考慮されたような事情があるか否かは、ノベルティグッズの配布が商標権侵害に当たるか否かを判断するうえで、非常に重要な要素になるものと考えられます。

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社長
どうやら、当社のノベルティグッズが、商標権を侵害する可能性は低そうですね。
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弁護士
そうですね。御社のノベルティグッズは純粋な販促品として無償で配るものですし、配布する人も限られています。市場で流通することもなさそうですしね。そう考えると、大丈夫そうです。
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