不正競争防止法における原産地の偽装表示について
不正競争防止法は、商品の原産地について誤認させるような表示をする行為や、そのような商品を譲渡等する行為を、不正競争として規制しています。なお、景表法、関税法、JAS法にも原産地表示に関する規定がありますが本稿では割愛し、不正競争防止法についてのみ説明します。
原産地を偽って商品を販売すると、偽装表示として民事上の差止め、損害賠償や、刑事罰の対象となる場合があります。
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
<略>
二十 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為
<略>
商品の原産地とは?
ベルギーダイヤモンド事件
商品の原産地とはどこをいうのでしょうか?例えば、A県で生産された原料をB県で加工し、更にC県でも加工して完成させた場合、どこが原産地になるのでしょうか?
これについて、原石が他国で採掘され、加工のみがベルギーで行われたダイヤモンドを「原石ベルギー直輸入」と表示し販売した被告人の行為が不正競争行為とされた事件では、「ダイヤモンドのように加工のいかんによって商品価値が大きく左右されるものについては、その加工地が一般に『原産地』と言われている」のであり、このような表示は原産地を誤認させるものではないとされました。
なお、本事件では被告人会社が問題のダイヤモンドをベルギーから直接輸入した事実はなかったことから、『商品の品質、内容』につき誤認を生ぜしめる虚偽の表示があったとして、結果的に被告人会社は有罪とされています。
裁判例を見る
本件は、被告人会社が、宝石の販売を行うに際し、その事実がないにも関わらず「原石ベルギー直輸入」と表示して販売を行った事件です。裁判所は、「天然の産物であってもダイヤモンドのように加工のいかんによって商品価値が大きく左右されるものについては、その加工地が一般に『原産地』と言われているものであって、本件のダイヤモンドは世界でも有数の加工地とされるベルギーにおいて加工されたものであることが明らかであるから、本件チラシの前記表示は商品の『原産地』を偽るものではな」いとして、原産地に関する虚偽表示はないとされました。
しかし、「被告人会社においては原石をベルギーから直接輸入した事実はないのであって、これは、・・・顧客が流通経路の短縮により本件商品が市価の約半額で販売されるものと思いこむことを承知の上で、二重価格表示と合わせて右の表示をしたものであると考えられ、本件チラシの右記載部分は一般読者をして『商品の品質、内容』につき誤認を生ぜしめる虚偽の表示にあたる」として、被告人会社を有罪としました。
原産地とは
上記裁判例によれば、原産地とは商品価値に大きな影響を及ぼした行為が行われた地、ということになりそうです。
また、公取委による「商品の原産地に関する不当な表示」(昭和48年10月16日公正取引委員会告示第34号)では、原産国は次のように定義されています。
「原産国」とは、その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国をいう。
需要者の認識が重要
産出地、製造地、加工地のどれがどこが原産地であるかは、需要者の認識によるべきです。
このうちの2つ以上が重要である場合には、例えば、「日本製、原材料は中国製」というように併記するのが望ましいでしょう。
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