笠原 基広
この記事のまとめ
  • エイプリルフール記事なので表題は真に受けないでください。
  • AIは大筋では正しい回答をしてくれますが、正確でない部分や、明らかな誤りも散見されます。
  • 誤りを指摘すると素直に謝罪して訂正してくれます。
  • 記事執筆にはまだまだ「専門家の助言」が必要なようです。
  • 法律相談は弁護士に

1.特許法の問題に弁護士というテイで回答してもらいました

最近話題になっているAIチャットサービス「ChatGPT」は、質問に対しても高度で自然な文章を作成してくれます。知財FAQでもChatGPTに記事作成を任せられたらどんなに楽なことか。

今日は4月1日ですので、ChatGPTに記事作成をしてもらうことにしました。特許法の簡単な質問に対して、弁護士として回答してもらうというテイでやってみます。

ChatGPTとの会話
FAQ
あなたは弁護士です。特許権侵害の主張がされた場合、有効と考えられる反論を弁護士として解説してください。
GPT

特許権侵害の主張に対する有効な反論には、以下のようなものがあります。

  1. 特許権の無効性の主張 特許庁において特許権の無効性を主張することができます。特許権は、技術的な進歩を促進するために、一定の要件を満たす発明に対して与えられます。しかし、特許権が与えられる発明には、新規性、進歩性、産業上の利用可能性などの要件があり、これらの要件を満たしていない場合、特許権は無効となります。侵害された特許権が無効であることを証明することができれば、権利侵害の主張は無効となります。
  2. 技術的に同等なものの存在の主張 侵害行為をしていないことを主張する場合、同じ技術的機能を持つ別の技術を使用していることを示すことができます。この場合、特許権の保護対象とされた技術と同等の技術機能を持つものであれば、侵害行為をしていないことが主張できます。
  3. 特許権の範囲の解釈の異議申立て 侵害された特許権の範囲を限定することができます。特許権は、特定の技術的発明に対して保護されるものであり、その発明の範囲に限定されます。侵害された特許権の保護範囲を解釈することで、侵害行為をしていないことを主張することができます。

以上のように、特許権侵害の主張に対する有効な反論は複数存在します。特許権侵害の主張に直面した場合は、専門家の弁護士に相談することが重要です。

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なかなか優秀ですね。でも、弁護士に相談しているはずなのに「特許権侵害の主張に直面した場合は、専門家の弁護士に相談することが重要」と言われてしまったら、あなたが弁護士でしょ?とキレちゃうクライアントがいそうです。もしかしたら弁護士法74条(非弁護士の虚偽標示等の禁止)の規定を気にしているのかもしれません。おそろしい子。

1の権利無効についての回答は概ね誤っていないです。ただし、回答にあるように特許庁で無効審判を請求することももちろん可能なのですが、特許権侵害訴訟中で抗弁として特許無効を主張することも可能です。

3の反論は、特許請求の範囲を限定的に解釈して、被疑侵害品が特許請求の範囲には含まれない、と主張するということですので、特許発明の構成要件非充足に関するもののようです。細かい部分に違和感があるものの大まかな文脈で捉えればまぁ間違ってはいないかな、という感じです。ここでは異議申し立てと記載されていますが、行政庁等に対する申立て手続きがあるわけではなく、相手方にそのような反論をしてください、という趣旨かと思います。なお、特許異議の申立てというのは独自の手続きに与えらえれている名前ですので(特許法第百十三条「特許異議の申立て」)、ここで異議申立てというのは若干の違和感があります。

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2.なかなか優秀な回答ですが、突っ込みどころアリ

2についてはちょっと何言ってるのかわからない。もうちょっと聞いてみます。

ChatGPTとの会話
FAQ
2の「同じ技術的機能を持つ別の技術を使用していることを示す」というのは、特許の保護対象とされる特許発明と技術的には同等だけど、特許請求の範囲には含まれない発明であることを示す、という意味でしょうか?そうだとしたら2の主張と3の主張とはどのように異なりますか?
GPT

はい、その通りです。技術的に同等なものとは、特許の保護対象とされる特許発明と同等の技術機能を持つ別の技術であり、特許請求の範囲には含まれないものです。

2の主張は、侵害された特許権に対して同等の技術機能を持つ別の技術を使用しており、侵害行為をしていないことを主張するものです。つまり、特許権の保護対象とされた技術とは別の技術を使用しているため、特許権侵害に該当しないと主張することができます。

一方、3の主張は、侵害された特許権の範囲を限定することで侵害行為をしていないことを主張するものです。つまり、特許権の保護範囲を解釈することで、侵害された特許権に該当する技術とは異なる技術を使用していることを主張することができます。

2と3の主張は、それぞれ異なるアプローチを持っていますが、共通しているのは、特許権侵害を否定するために、特許権の保護対象とされた技術とは異なる技術を使用していることを主張することです。どちらの主張が最適かは、具体的な事案によって異なるため、専門家の弁護士の助言を仰ぐことが重要です。

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2も3のどちらとも構成要件非充足についてのもので、2は同等の技術だけど中身が違う、3はそもそも権利範囲から外れている、ということのようです。法的な視点で抽象化すれば同種の反論ですが、アプローチが違うということでしょうか。

3.他の反論についても聞いてみました

無効、構成要件非充足以外にも反論の主張はあるはずですので、もうちょっと質問してみます。

ChatGPTとの会話
FAQ
1から3の主張以外に、有効と考えられる反論はありますか?
GPT

はい、他にも有効と考えられる反論があります。以下に、その例を挙げます。

  1. 公知の技術であるため、特許権は無効であると主張する。

特許権は、新規性、非自明性、産業上の利用可能性の要件を満たすものに限定されます。侵害された特許権が、公知の技術に対するものである場合、その特許権は無効であると主張することができます。

  1. 特許権侵害をしていないことを示す技術的な事実があると主張する。

特許権侵害を否定するために、特許権に関連する技術的な事実を主張することができます。例えば、特許請求の範囲に含まれる要素が欠落していたり、特許請求の範囲外の技術を使用していた場合、特許権侵害に該当しないと主張することができます。

  1. 特許権侵害に対する適用除外事由があると主張する。

特定の場合においては、特許権侵害に該当しないとされる適用除外事由があります。例えば、特許権侵害が実験的利用や純粋な学術研究に基づくものである場合、適用除外事由に該当することがあります。

以上のような反論は、特許権侵害に関する訴訟において、被告側が主張することができます。ただし、具体的な事案によっては、これらの反論が有効であるかどうかは異なりますので、専門家の弁護士に相談することが重要です。

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4は1と同様の無効主張ですが、1と異なり特許庁における主張に限定していないです。しかし、無効理由としてなぜか公知だけが論じられています。

5は構成要件非充足の主張です。「特許請求の範囲に含まれる要素が欠落」しているというのは、構成要件非充足の主張そのものです。しかし、「特許請求の範囲外の技術を使用」していても、構成要件を充足している限り侵害にはなってしまいます。必要条件と十分条件の違いですね。ここは誤っているかもしれませんので、真意を確認してみます。

ChatGPTとの会話
FAQ
5の主張について、「特許請求の範囲外の技術を使用」していても、構成要件を充足している限り侵害に該当するのではないでしょうか?
GPT

ご指摘の通りであります。特許権の侵害は、特許請求の範囲内に定められた要件を満たす行為に対して行われるものです。そのため、特許請求の範囲外の技術を使用していたとしても、特許請求の範囲内に定められた要件を満たしている場合は、特許権侵害に該当することがあります。

5の主張は、例えば特許請求の範囲外の技術を使用したことにより、特許権侵害に該当しないと主張する場合に用いられることがあります。ただし、特許請求の範囲外の技術を使用していた場合でも、侵害の可能性があることに留意する必要があります。

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なるほど。要は、特許発明の構成要件に該当する要素のかわりに、構成要件に該当しない要素を使用したために、構成要件非充足になるということですね。

6の適用除外事由というのは、試験・研究に特許権の効力が及ばないという規定のことですね(特許法第六十九条1項)。「適用除外事由」というのは違和感がある用語ですが、あえてこの語を使って他にないのか聞いてみます。

ChatGPTとの会話
FAQ
特許権侵害に対する適用除外事由として他にはどのような事由がありますか?
GPT

特許権侵害に対する適用除外事由としては、以下のようなものがあります。

  1. 公共の利益にかかわる場合:例えば、医療や研究など、公共の利益にかかわる目的で行われる場合には、特許権侵害が認められない場合があります。
  2. 同一技術の使用:既に特許権を取得している者が、同じ技術を使用することは特許権侵害にはなりません。
  3. 実施の範囲に限定がある場合:例えば、特許請求の範囲に含まれない部分については、特許権侵害にはなりません。
  4. 権利者の許諾がある場合:権利者の許諾を得た場合は、特許権侵害にはなりません。
  5. 有効期限が終了している場合:特許権は、一定期間の有効期限が設定されています。有効期限が終了している特許については、特許権侵害にはなりません。

ただし、特許権侵害に該当しないと主張する場合でも、その事由が妥当かどうかは、具体的な事情によって異なるため、専門家に相談することが重要です。

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1の試験研究に関する部分は前述の通りです。公共の利益にかかわる場合というのは、公共の利益のための裁定実施権(特許法第九十三条「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定」)のことでしょうか。しかし、特許権侵害とならないためには協議や裁定によって実施権の許諾を受ける必要があります。「特許権侵害が認められない場合があります」というのはその通りですが、あまり正確ではありません

「~する場合がある」と回答してしまうと、可能性のある場面を1つ挙げることさえできればその回答は正しいということになりますが、回答としてはあまり価値がありません。誤ったことを言いたくないので無難な回答をするのは、ちょっと自己保身的ですよよね。正確性を重んじるばかりに「~する場合がある」「~の可能性がある」という回答をしてしまうのは「弁護士あるある」じゃないかと思います。そういう意味では弁護士としての回答に寄せているのかも。身につまされます。人の振り見て我が振り直せ、ですね。人じゃないけど。

2は明らかな誤りです。よくある誤解ですね。既に特許権を取得していても自由に発明を実施できるわけではありませんし、先願発明と利用関係にある場合には特許権侵害となります(特許法第七十二条「他人の特許発明等との関係」)。次の記事の「社長」と同レベルです。

3は先ほどと同じ構成要件非充足論、4と5についてはその通りですが、そのような場合に特許権者が特許権侵害の主張をするかどうかは微妙なところです。

2について突っ込んでみましょう。

ChatGPTとの会話
FAQ
2については、既に特許権を取得している者が、同じ技術を使用したとしても、先願の特許権に侵害することはあるのではないですか?
GPT

ご指摘の通りであります。2の「同一技術の使用」という適用除外事由については、以下のように補足する必要があります。

既に特許権を取得している者が同じ技術を使用する場合でも、その技術が先願の特許発明と同一である場合は、先願の特許権を侵害する可能性があります。この場合、特許権侵害を避けるためには、先願の特許権が存続している限り、その特許権者から使用許諾を得るか、あるいは特許権を無効化するなどの対策が必要となります。

また、同一技術の使用という適用除外事由には、特許請求の範囲が限定されている場合には適用されないことにも注意が必要です。例えば、特許請求の範囲には「装置の部品を特定の材料で製造したもの」と限定されている場合、同じ技術を使用しても、使用する材料が特許請求の範囲に含まれない場合には、特許権侵害に該当することがあります。

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結局のところ先願の特許権を侵害すれば侵害となる、ということですね。「同一の技術の使用」はあまり関係ないと思うのですが。

しかし、第3段落は明らかな誤りと思われます。特許請求の範囲に「装置の部品を特定の材料で製造したもの」と限定されている場合、「使用する材料が特許請求の範囲に含まれない場合」には、特許侵害に該当しないんじゃないのでしょうか。法的知識以前の話でよく読めば誤りに気付くレベルです。

ChatGPTとの会話
FAQ
特許請求の範囲には「装置の部品を特定の材料で製造したもの」と限定されている場合、「使用する材料が特許請求の範囲に含まれない場合」には、特許侵害に該当しないんじゃないのでしょうか。
GPT

申し訳ありません、前回の回答に誤りがありました。ご指摘の通り、特許請求の範囲に限定された技術においては、特許請求の範囲に含まれる材料を使用した場合に限り、特許権侵害に該当することになります。特許請求の範囲に含まれない材料を使用した場合には、特許権侵害に該当しないことになります。このように、特許請求の範囲によって、特許権侵害の範囲が限定されます。

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素直に謝りを認めて謝罪できるのは良いことです。人間ではなかなかこうはいきませんので、見習いたいものです。

しかし、無効と構成要件非充足ばかりで、いつまでたっても先使用権とか、審査経過禁反言とか出てこないですね。網羅的な回答を求めてみます。

ChatGPTとの会話
FAQ
特許権侵害に対する適用除外事由はほかにどのようなものがありますか。網羅的に全て挙げてください。
GPT

特許権侵害に対する適用除外事由は国や地域によって異なるため、全てを網羅することはできません。一般的には以下のようなものがあります。

  1. 公益上必要な行為
  • 例えば、製薬会社が特許権を有する医薬品を販売することを禁止されている場合でも、特定の病気に対する救済を必要とする患者に対して薬剤を提供することは、公益上必要な行為として特許権侵害の除外事由になる場合があります。
  1. 同一発明の開示に基づく自己利用
  • 特許権侵害の主張を受けた者が、自分自身が発明した同じ技術を特許出願前に開示していた場合、その技術については、特許権者の特許権を侵害していないと主張することができます。
  1. 先行技術の使用
  • 特許権が有効である技術よりも、先行して公知されている技術を使用している場合、その使用は除外されることがあります。
  1. 個人的な非営利活動のための使用
  • 特許権者が自らの権利行使を妨げない範囲で、特許権者以外の個人が自己の目的のために特許技術を使用することができます。

ただし、これらの除外事由が適用されるかどうかは、事案の具体的な状況や法律の解釈によって異なるため、専門家の弁護士に相談することが重要です。

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「特許権侵害の除外事由になる場合」があるというのはその通りなのですが、前述のとおり協議または裁定による実施権があるのみです。2は公知無効かな。自分自身が発明していなくても特許出願前に開示されていれば特許無効になりますので、自分自身が発明した同じ技術に限定しているのはなぜでしょうか。3も公知無効の話でしょうか。

4は善解すれば「業として」の実施(特許法第六十八条「特許権の効力」)ではないということでしょうか。そうだとしても「特許権者が自らの権利行使を妨げない範囲」で「個人が自己の目的」で特許発明を実施すれば必ずしも「業として」の実施に該当しないわけではありませんので、正確ではありません

法定実施権や、特許権の効力が及ばない場合を、網羅的に挙げることはどうも難しいようです

4.専門家に相談しているはずですが

ところで、先ほどから弁護士に質問をしているテイなのにもかかわらず「専門家の弁護士に相談することが重要」と繰り返し言われるので、突っ込んでみました。

ChatGPTとの会話
FAQ
弁護士としての回答をお願いしましたが、専門家の弁護士の助言を仰ぐことが重要という回答は回答になっていないのではないですか?
GPT

申し訳ありません。私たちAIは一般的な情報を提供することができますが、法的アドバイスを提供することはできません。具体的な法的問題に対する正確なアドバイスを求められる場合は、弁護士に相談することが重要です。

回答画面を見る

なんかゴメン…

5.まとめ

ChatGPTは自然な文章で大筋では正しい回答を返してくれますが、網羅的な回答は苦手なようです。また、ところどころ誤りも見受けられます。誤りを指摘すると素直に謝罪して正しい答えを返してくることもあります。

記事作成をするにはまだまだ「専門家の助言」が必要なようですが、某サービスのように弁護士による法律相談の回答や、法学の論文より学習したり、今後学習の精度が上がっていけば、正確な記事作成が可能になるかもしれません。

とにかく当サイトではChatGPTによる記事作成は諦めて、従前と同様に専門家である中の人が記事作成を続けることにします。

それから、AIは時々明らかに間違っていることを言うようですので、法律相談をするなら弁護士にしましょう(ここ重要)。